2013年春、coldrainとSiMをヘッドライナーとして開催された“MONSTER ENERGY OUTBURN TOUR 2013”。ラウドシーンに新たな風を巻き起こしてたくさんの注目を集めた同ツアーが、今年はcoldrainとCrossfaith、そしてアメリカの 次の世代を担うメタルコアバンド・Miss May Iの3組をヘッドライナーとして全国9箇所で開催される。“OUTBURN TOUR 2014”を巻頭特集として取り上げる今月号では、国内だけではなく海外へも活動の幅を広げるラウドシーンの両翼、coldrainと Crossfaithの2人のヴォーカリストにそれぞれソロインタビューを敢行した。
アルバム『THE REVELATION』のツアーを無事終え、2014年2月から3月にかけて自身初となるヨーロッパツアーを行ったcoldrain。帰国直後の Masatoにヨーロッパツアーを経た心境と“OUTBURN TOUR 2014”にかける想い、CrossfaithとMiss May Iについて訊いた。
「俺らとCrossfaithが居ることによって“OUTBURN TOUR”は必ず価値のあるものにするつもりだし、この機会にMiss May Iが来たいと思ってくれたこと自体がすごく意味のあること」
●昨年10月の“THE REVELATION TOUR 2013 ONE MAN SHOWS”の渋谷AXも、1/18に新木場studio coastで行ったワンマンライブ“EVOLVE”もすごく盛り上がりましたよね。自信に満ち溢れた堂々としたステージだった。
Masato:アルバム『THE REVELATION』を完成させて曲も増えて、ワンマンでまわる意味がより深くなったというか。だから初めて、各地でワンマンをやりたいということで組んだツアーだったんです。やっぱりお客さんも全部のアルバムを聴いて来てるっていうのをすごく感じたし、実際俺ら的には楽しくやるだけでいいっていうか。
●それは観ていて感じました。Masatoくんが煽らなくても曲の盛り上がりでフロアが自然に爆発するという。
Masato:そうそう(笑)。限界と限界の闘いというか、お互いどこまで超えていけるかっていう感じのライブでした。だからやる前は緊張感があったんですけど、ステージに立ったら全然緊張もなく。長い時間でやることがcoldrainにとっては意味があるんだなって改めて実感しましたね。
●そして2月から3月にかけて初のヨーロッパツアーに行きましたよね。
Masato:海外というと台湾と韓国ではライブをしたことがあったんですけど、英語圏のライブは初めてで。14カ国でライブは21本。
●え? 1ヶ月半足らずで14カ国21本? すごいな。
Masato:ヨーロッパツアーは、ワンマンツアーとは真逆の闘いだったんですよ。まったく知られていないところで、「coldrainとはこういうバンドだ」っていうのを思い切りぶつけるというか。日本で言えば3~4年前に戻った感じだったので、初期衝動みたいなものを思い出しましたね。日本の状況に慣れちゃっていたというところにも気づいたし。
●なるほど。
Masato:でも今までずーっと“海外でライブをやったらどうなるのかな?”という疑問があったんですけど、日本でやってきたことをやればいいんだということに、ヨーロッパに行って2~3日目で気づけたんです。
●なるほど。海外だからといって変に構える必要はないと。
Masato:初めてということで緊張したのは1本目だけで、それからはもうやるだけという感じでしたね。実際にライブをやってみたらウォーッ! っていう感じで盛り上がったんです。
●coldrainはずっと以前から海外での活動を目標にしてきたし、そのためには日本の足場を固めなくちゃいけないとストイックにがんばってきましたよね。言ってみれば待望のヨーロッパツアーだったと思うんですが。
Masato:そうですね。洋楽のバンドがずっと好きで、バンドを始めた頃から海外っていうのは夢だったんです。ただ、実際に行ってみると“今まで行ってなかっただけなんだ”っていう感覚になったというか。
●ああ~。
Masato:「遂にやって来ました!」という感覚ではなくて、行ってみたら日本でやるのと同じだった。土地が違うだけで、観ている方も「日本人はどこまでやれるんだ?」という感じで観ているわけではないんですよね。国が違っても音楽は音楽なので。
●うんうん。
Masato:だから今まで構えて“このタイミングで行こう”と思っていたのがアホらしくなっちゃって。俺ら的には、日本で目標としていたstudio coastのワンマンをやった後に海外に行くっていう想いがあって、それはそれで良かったんだけど、「海外に挑戦する」みたいな感覚で行ったとき、“挑戦”とは違うなということに気づいたんです。それこそプロ野球の世界と一緒で、日本の選手がメジャーに行っていきなり活躍することはよくある話じゃないですか。それと同じで、日本で作り上げてきたものは海外でもそのまま通用するんだなって。日本でファンを作ることができた自信というものは、そのまま海外でも通じる。別に下から海外を見る必要はなくて、日本でも海外でもライブはライブだなって。
●なるほど。あと、Masatoくんには日本人の血もアメリカ人の血も流れているわけじゃないですか。以前のインタビューで「大人になって日本人の気持ちもアメリカ人の気持ちもわかるようになったし、それは自分の強みだ」と言っていましたが、そういう感覚は今回のヨーロッパツアーではどうでした?
Masato:自然でした。
●自然?
Masato:1回もやったことがない英語でのMCが超自然でした。普通にできました。何も考えなくてもできちゃうっていうか。日本に帰ってきて北海道で1本ライブをやったんですけど、日本語のMCの方が難しいなって思いました。
●ハハハ(笑)。
Masato:日本語は言葉そのままで受け止められるんですけど、英語だと色んなニュアンスがあるから固いことを言ってもそこまで固くならないし、軽いことを言ってもそれほど軽くならないんです。言い方とかでニュアンスが変わってくるから。
●ほう。
Masato:例えば「美しい」と「beautiful」と言ったとして、“beautiful”には軽いニュアンスもあれば重いニュアンスもあるんですけど、“美しい”は絶対に固いイメージじゃないですか。
●うん、そうですね。固い。
Masato:そういう部分で、MCをするときに日本語ではニュアンスが難しかったりするんですけど、英語だとポーンと使っても重くなりすぎないし、軽くなりすぎない。バランスが上手く取れる感覚があるんです。日本語の方が難しいし、深いですよね。海外の方が楽。
●Masatoくんの中のアメリカ人の血が影響しているかもしれないですね。
Masato:そうかもしれないです。今まで6年間ずっと日本語でやってきたのに、英語の方が簡単だったということに気づいてしまいました(笑)。
●アハハハハ(笑)。
Masato:でもヨーロッパに行って1つすごく思ったのは、日本は「お客さん」って言うじゃないですか。でも海外では「オーディエンス」なんですよね。バンドの方が絶対に上っていう。お金を払って来てもらって「ありがとう」と感じる感覚は素晴らしいことだと思いますけど、その両方の感覚を持って海外に挑めると強いと思うんです。海外はもっと雑だから。日本人なりの感覚と海外の感覚を併せ持つことができれば、すごくいいバランスになるというか。だから今は、海外と日本、両方の感覚を経験した上でのバランスを作ることができたらいいなって思ってます。
●昨年の“OUTBURN TOUR”はSiMとのダブルヘッドライナーでしたけど、昨年はどうだったんですか?
Masato:いい意味で悲惨でした(笑)。
●悲惨て(笑)。
Masato:“TRIPLE AXE”(coldrainとSiMとHEY- SMITH3バンドによるツアー)はありましたけど、言ってみれば昨年の“OUTBURN TOUR”はSiMやcoldrainが感覚的に作り上げてきたシーンの初めてのツアーだったんです。ラウドなバンドの集まりで。
●はい。
Masato:だから来ているキッズもみんな最初から本気なんですよね。1バンド目から飛ばし過ぎてて後半バテバテで、トリになるほど最悪っていうか“なんだこれ?”みたいな状態になってる。そういう気合いが満ち溢れてて、ガチンコだったんです。俺は去年、アメリカのレコーディング帰りで太っていたんですけど“OUTBURN TOUR”で痩せましたもん。毎日毎日汗かくから4kgくらいポンと痩せました。
●ということは、今年の“OUTBURN TOUR”も当然すごいことになると。
Masato:なるでしょうね。しかも去年は3マンでしたけど今年は4マンですからね。更にヘッドライナーがうちとCrossfaishとMiss May Iっていう。企画している人はアホなんじゃないかと思う(笑)。
●ハハハ(笑)。今回はそのCrossfaithのKoieくんにもソロインタビューを行っているんですけど、coldrainから見てCrossfaithはどういう存在ですか?
Masato:Crossfaithが海外に行く以前から、俺らにとっては後輩であり憧れてきたバンドですね。大阪の堺Goithというライブハウスで初めて一緒にやったとき、ドラムのTatsuya(Tatsuya Amano)とかは学ラン着ててまだ高校生だったんですけど、もう完成度がヤバくて。お客さんの数とか関係なく、すごく完成度の高いライブをしていて。俺らは当時もうCDデビューしていたんですけど、“自分たちはこういうバンドだ”っていうことが俺ら以上にCrossfaithはわかっていたんだと思うんです。そういう部分にずっと憧れてきた。
●なるほど。
Masato:見ているところが最初から世界なんだなって感じたし、広い視点でものを見ているっていうか。その後、期待以上の実績を海外で残してきたし。だから俺らにとっては、Crossfaithの存在自体が刺激なんですよね。
●Crossfaithは海外メインで活動していますよね。そういう意味で、日本のシーンに於いては特殊というか。
Masato:海外に実際に行ってみて実感したんですけど、日本の地方と一緒で、何度も行かないと名前を知ってもらえないというか。その上で、Crossfaithは与えられたチャンスを全部もぎ取る気持ちが強かったと思うし、人と関わるのがすごく上手いから、日本人ということを苦にしてないっていうか、言葉の壁も気にしていないんだろうなって思います。
●CrossfaithのKoieくんはMasatoくんと同じピンヴォーカルじゃないですか。なんとなく、ステージ上の感情の振り幅とかカリスマ性みたいなものが近いと思うんです。
Masato:そうですね。自分でも似ていると思う部分としては、俺もKoieも結構真面目に育ったんですよ。普通に学校行って、普段は結構真面目なタイプの人間なんです。それがステージで初めて爆発する。俺もKoieも基本的には真面目に考えてて、あいつと話してても“似てるな”って思うことがよくあります。
●そうだったんですね。
Masato:だからステージに立ったときの“自分だけの世界だ”っていうあの感じも似てるなと思うし、“自分のやり方に関しては人の意見なんて聞く必要ない”というスタンスも似ていると思います。色々と話をしている中でも、共通点は多いですね。
●ヴォーカリストという以前に、人間として近いと。
Masato:そうですね。考え方も近いし。そういう意味で、人としてもリスペクトできる奴なんです。
●そういうバンドとツアーができるっていうのは、いいことですね。
Masato:そうですね。昔からCrossfaithのメンバーとも話していたんですけど、海外のやり方で好きだなって思うのが、同じバンドでたくさんまわるっていうところ。ツアーでしか得られない刺激っていうのはいっぱいあるし、前からCrossfaithと「一緒にやりたいね」という話をしていて。
●あ、そうなんですね。
Masato:それが去年、あいつらのツアーのファイナルシリーズ3本に3本とも俺らがついて行った理由でもあるんです。1本だけやるというより、何本でもやりたい。だから今年“OUTBURN TOUR”をやるとなったとき、たぶんCrossfaithが居なければ俺たちは「やる」とは言わなかったと思うんです。このタイミングでCrossfaithと全箇所まわるんだったらやりたいなと。
●そういう話を聞くと観る方も気持ちが更に入りますね(笑)。それともう1組のヘッドライナーであるアメリカのMiss May Iですが、面識はあったんですか?
Masato:ないです。でも俺らが海外で所属してるRaw Power ManagementにMiss May Iも所属していて、同じくらいの世代で、アメリカでも目立ってきているバンドなんです。自分の本国のシーンでの立ち位置とかが俺らと同じくらいなんです。だからこそ、そういうバンドをツアーで呼べるっていうのはすごくいい機会だと思うし。まず海外のバンドだとフィールドが大きすぎて、日本を細かくまわるなんてなかなか難しいじゃないですか。でも俺らとCrossfaithが居ることによって“OUTBURN TOUR”は必ず価値のあるものにするつもりだし、この機会にMiss May Iが来たいと思ってくれたこと自体がすごく意味のあることだと思うんです。
●なるほど。
Masato:前からCrossfaithはMiss May Iを日本に呼ぼうとしていたし、本人たちもやりたいと思ってくれているということは色んな人から聞いていて。だから楽しみです。
●ということは、今年の“OUTBURN TOUR”はいい意味で去年以上に悲惨になりますね(笑)。
Masato:たぶん地獄です(笑)。絶対にヤバい。なるべく早い出順でやりたい。
●ハハハ(笑)。楽しみにしています。そして“OUTBURN TOUR”の後はまた6月にヨーロッパのフェスが控えていて。あまり間を空けずにまた行けるのはいいことですね。
Masato:海外に行くまでにここまで時間がかかったのは、その辺も含めてタイミングを見ていたという部分もあるんです。ヨーロッパでやって日本でやって、そこにアメリカも入れていけたら嬉しいですよね。去年とかに比べたら日本でやる数は減っちゃうかもしれないですけど、でもその分ツアーでまわったり、しっかり自分たちのライブができる状況を作っていこうと思っているんです。そういう意味では、今後は1本1本をより濃くできればと。
●ということは、coldrainは今後も海外と日本の比重を半々くらいで活動していくと。
Masato:そうですね。単純に今までオフで使っていたところをすべて音楽に捧げるという覚悟です(笑)。海外と言ってもまだヨーロッパに行っただけですからね。アメリカやオーストラリアはもちろん、南米やアジアもある。要するに、今後の俺らのスケジュールは鬼だということです(笑)。
●ハハハ(笑)。
Masato:でもずっとやりたかったことだし、むしろやんなきゃ駄目だなっていうくらいの感覚で。日本のバンドがもっと世界に行くべきだと思うし、単純に反応してくれる人が居るんだったら行かなきゃと思うし。チャンスを全部掴みたいです。
●最近は洋楽を聴かなくなっているという話をよく聞きますけど、coldrainやCrossfaithが世界で活動して、今回のようにMiss May Iが日本に来るということ自体が、海外のバンドを知るきっかけにも繋がりますよね。洋楽とか邦楽とか関係なく、いいものはいいという価値観が基準になるという。
Masato:それに、洋楽を聴かないのは単純にバンドが日本に来ないからっていうところが大きいと思うんです。結局、俺らやCrossfaithが土俵を一緒にすることで、海外のバンドがもっと日本のシーンに目を向けるだろうし。こないだchiodosというバンドとヨーロッパで対バンしたとき、ヴォーカルのクレイグ・オーウェンズに「もっと早く知っていたら自分たちのツアーに呼びたかったよ」って言われたんですよ。
●へぇ~。
Masato:そういう感覚で俺らも海外のバンドを呼びたいんですよね。だから土俵を一緒にしないといけない。「スペシャルゲストとして海外から来てもらいました!」じゃなくて、向こうが「日本ヤベェから行きたい!」と思ってくれるようになればいいと思うんです。そういう状況になるまでには時間がかかるでしょうけど。
●ちょっと言い方は固いかもしれないけど、そういう部分での使命感みたいなものを感じている?
Masato:そうですね。昔からそうですけど、海外のかっこいいバンドが日本に来て少ないお客さんでやっているのは単純にもったいないと思うし。これから色んなバンドと出会っていくと、そういう気持ちは尚更強くなっていくでしょうね。世界に於ける日本のバンドの基準を上げたいし、日本では海外のバンドの基準を下げたいんです。日本って、海外のバンドをちょっと崇めるじゃないですか。そうじゃなくて、もっと基準を下げたら気軽に来ることができる環境になるから。
●それはきっと、日本でcoldrainがやってきたことと同じ感覚なんでしょうね。東京や福岡でかっこいいバンドと仲良くなったから名古屋に呼んで、今度は仲間の土地に行くっていう。
Masato:そうです。まったく一緒ですね。日本と海外の情報の差がもっとなくなって、日本からもっとバンドが海外に行くようになれば、いい感じのバランスになると思うんです。だからまだまだ時間はかかると思います。でもやっと一歩を踏み出せたかなって。
アルバム『APOCALYZE』のジャパン ツアー後、今年2月にはLimp Bizkitとの全英ツアーを大成功させたCrossfaith。JUNGLE☆LIFE初のインタビューは、独自のスタンスで活動を重ねる Crossfaithの核となるマインド、そしてライバルcoldrainと、以前より共演を熱望していたMiss May IについてVo. Kenta Koieに訊いた。
「同じバンドでパッケージでまわる、これ自体が海外のスタイルというか。俺たちが何故Miss May Iを呼んだのか、何故海外のバンドを入れたのかっていう理由も含めて観てほしい」
●Crossfaithは、活動のスタンスが他のバンドとは全く違うと以前から思っていたんです。結成当初から海外での活動を視野に入れていたんですか?
Kenta Koie(以下Ken):そうですね。バンドを始めるきっかけが洋楽で、俺らの場合は全く日本のバンドを通っていないんです。だから自然と絶対海外で活動したいっていうのが昔からあって。中学校くらいの時に思っていたのは、海外のバンドのCDは日本に置いてあるのになんで日本のバンドのCDは海外にあまり置いてないんだろうっていうこと。単純な疑問だったんです。
●なるほど。
Ken:例えば、俺が始めて行ったコンサートは“SUMMER SONIC”だったんですけど、あれも洋楽中心のフェスじゃないですか。そこでGreen Dayを観て「すげぇ! バンドってすごい!」って。聴いてきた音楽が海外のバンドばかりで、例えば野球だと日本の選手はメジャーリーグに行きたがるじゃないですか。それと似たような感覚ですね。それも、例えば日本人が好きな海外のお客さん相手にライブをしたいんじゃなくて、リアルに認められたいっていう想いがすごくあって。そのために俺たちは曲を作ってきたしライブをしてきたので、元からそこに照準を置いていたんです。その道中で、俺たちの意思に同調してくれる人が現れてたり。それが今のマネージャーだったりするんですが。
●あ、そうなんですか。
Ken:マネージャーは年下なんですけど、俺らが“LOUD PARK”に出た時に「お前ら海外でライブしたいやろ? “Warped Tour”出たいやろ?」と言ってきたんです。「何やねんコイツ?」って。行きたいに決まってるけど、どうやってやっていいかも分からんし。マネージャーは当時まだ20歳にもなっていなかったんですけど、「海外に日本のバンドを連れて行きたい。Crossfaithというバンドを海外に連れて行きたい」って。そういう出会いが他にも色々あったんです。
●Crossfaithはcoldrainよりも年下らしいですけど、バンド歴はどれくらいになるんですか?
Ken:7年くらいです。初めてcoldrainと対バンしたのは堺なんですよ。俺らが堺の地元のライブハウスでやっている時に「名古屋にすごいバンドおんねんで」って対バンしたのが5~6年前。Crossfaithを結成して1年経ってるくらいの時に対バンして、そこからの付き合いなんです。
●Crossfaithのステージングは独特だと感じるんです。海外での経験を積んできたということも影響していると思うんですが。
Ken:海外での経験は大きいですね。悪い意味じゃなく、明らかに日本のお客さんと海外のお客さんは全然違うし。日本のバンドって、MCとかメッセージで伝えたい想いも強いじゃないですか。でも俺らが海外のバンドに憧れてかっこいいと感じるのは動きや作り方の部分で、自分たちもそういう風になりたいと思ってきたのが根本にあると思うんです。俺らなんかは音楽オタクだから、例えば休みの日はずっとYouTubeを観て、「海外のバンドはどんなライブしてるんだろう?」とか、日本のバンドでもすごいと思うバンドは「どんなことをしているんだろう?」とか考えて。常に観ていくし自分にそういう刺激を与えないといけないと思っているし、そういうことが重要だと考えていて。端的に言うとパンチがあるバンドが好きなんです。観た瞬間に「これヤバい!」みたいな。自分たちもそういう瞬間を作りたいと意識して全員ライブしていると思いますね。メンバー全員負けず嫌いだし。
●全員負けず嫌いなのか(笑)。
Ken:例えばこの間一緒にツアーをしたLimp Bizkitは全員が全員個性を持っているし全員が同じベクトルを向いているけど、全員に違う個性があって。そういうライブをかっこいいと思うし、自分たちもそういうライブをしたいと思うんです。全てはリミックスだと思うんですよ。自分が知らないものは生まれてこないし、頭に入っていないものは生まれてこない。自分が今まで感じてきたものをリミックスして、自分でかき混ぜていいものを抽出してやっていく。それがいちばんいい方法なんじゃないかなと感じます。
●海外に行くようになったことで思うところや感じることはありますか?
Ken:俺は日本が大好きで、日本人の人間性ってすごく重要だと思うし、世界屈指だと思うんですけど、海外は治安が良くなくて(笑)。その国の治安の悪さとか裕福さや貧困みたいな社会的背景は、音楽にすごく直結していると感じるんです。経済的によくない国ってハードコアとかロックとかヒップホップが流行ったりするし、人口は少ないのにライブに来る数が多いんですよ。例えばイギリスって人口めちゃくちゃ少ないじゃないですか。でも俺らが行ったツアー17ヵ所のどの場所でも2000~3000のキャパのハコがあって、そこでライブする人たちがたくさん居るんです。そういう文化とか歴史とか、治安とか社会的背景は音楽に直結していると思います。
●逆に、海外の経験を積んだからこそ日本が見えてくることもあるでしょうね。
Ken:ありますね。日本は音楽的にすごくいい国だと思います。何でも流行る国。BABYMETALとか異端児じゃないですか。あれがちゃんとしっかり流行ったりとか、きゃりーぱみゅぱみゅが流行ったりとか、MAN WITH A MISSIONが流行ったりとか、なんでもアリな国というか。鎖国しているようで新しいものに対してすごく貪欲だし、テクノロジーもそうだし、全てに於いて新しいものがすぐ流行るし、好奇心が旺盛なのかなって思いますね。もちろん保守的な部分もあると思うんですけど、でもすごくいいですよね。助け合いもできるし、お客さんの服装もそうだけどすごく協調性もあるし。
●なるほど。逆に悪い部分は?
Ken:うーん…。自分の主張がない。
●お、ズバッと斬りましたね。
Ken:今、日本ですごく人気のあるバンドっていうのは、人がしていないことをしているバンドだと思う。自分たちができていないから、それをアーティストに託しているのかもしれないというか。マキシマム ザ ホルモンなんてカウンターカルチャーじゃないですか。カウンター精神というか。
●そうですね。
Ken:あれを聴いて「うぉぉ!」ってなる人たちが居る。全体を見たときにこういった音楽シーンは少数派で、日本人全体に言えることは主張がないですよね。情報も受け売りだし自分で探したりもしないし、自分の国が今どうなっているのかという関心もない。でも関心がないってことはすごく平和な証拠だから、一概に悪いとも言えなくて。デモが起きたりしないし、そういうことに関心を持たなくても生きていける国だから。
●確かに。
Ken:でもアメリカではいいものが売れないというか。ずば抜けていいものは違いますけど、それ以下のバンドとかはみんな一緒のサウンドで、一緒のことをしているというか。それは俺の耳と目で感じたものだから、他の人がなんと言うかは分からないですけど。
●でもそれが現場の肌感覚なんですよね。
Ken:イギリスは逆に新しい音楽がすごく流行るんです。今でもドラムンベースやダブステップが生まれてくる国だし、エレクトロとかすごく強いし、独自の音楽もある。でもイギリスで売れているバンドがアメリカに行っても売れていないということが多くて。メッセージ性が違うんですよ。イギリスの方が政府に対して怒りを持ったメッセージを唱えているアーティストが多いけど、アメリカからしたらそういうメッセージは要らない。だから海外ツアーはめっちゃ面白いですよ。ヨーロッパなんかめちゃくちゃ面白いです。そういう部分が、国によって全然違うんです。
●歴史的な背景も全然音楽に出ているわけですね。そもそも文化ってそういうことだし。
Ken:そうですね。日本は日本の文化がある。
●すごく興味深い話ですね。
Ken:面白いです。だからこの年で海外ツアーでいろんな国に行かせてもらえるのはすごくいい経験だと思います。
●今回“OUTBURN TOUR”で一緒にヘッドライナーを務めるMiss May Iとは面識はあるんですか?
Ken:あります。俺らが去年出したアルバム『APOCALYZE』をレコーディングしたスタジオは、彼らが前のアルバムを作ったスタジオでもあるんです。俺らがレコーディングしているとき、ちょうどギターの奴が遊びに、というか修行みたいな感じで来ていて。それに、そもそも俺らはMiss May Iを過去に2回呼ぼうとしたことがあったんです。
●日本で自分たちのツアーに出てもらおうと。
Ken:はい。でも諸事情でどっちもダメだったんですよ。その後、マネージャーが“Warped Tour”に行っていろいろとコネを作っているときにMiss May Iと仲良くなり、去年俺らがオーストラリアのフェスティバルに行ったときに会って。「俺がCrossfaithやで。お前らMiss May Iやろ?」って。
●お互い名前は知ってますと。
Ken:「また呼ぶから出てな」って言ったら、「もちろんもちろん! 俺らも日本行きたいし」って。その後、2月のU.Kツアーではちょうど彼らもU.Kツアーをしていて、俺らのロンドンのライブに遊びに来てくれたんですよ。すごく若いバンドですけどいわゆる直球のメタルコア。すごくかっこいいんです
●ということは、念願ですね。
Ken:そうですね。ようやく。今年の“OUTBURN TOUR”の開催が決まったとき、coldrainとCrossfaithが中心になって“OUTBURN TOUR”のスタッフと話し合った上で、どっちも「Miss May Iがいい」と言って、それでMiss May Iに声をかけたんです。たぶん日本のキッズは知らないと思うんですよ。
●僕も初めて知りました。
Ken:かっこいいバンドだからぜひ聴いて欲しい。俺たちが海外のバンドを呼ぶ理由も受け取って、ちゃんと聴いてライブに向けて備えてくれれば嬉しいですね。やっぱり俺らも海外に行く時は行って楽しかった、よかったって思いたいし。Miss May Iにとってもすごくいい舞台だと思うんですよ。そういうツアーを日本でできるのって海外のバンドは難しいと思うんです、今は洋楽の勢いがないから。だからそういう意味ではいいチャンスなんじゃないかな…「いいチャンスじゃないか」って言ったら上から目線ですけど(笑)、一緒に遊びたいですね。
●感覚的には、自分たちが海外に行ったときと同じですよね。
Ken:そうそう。3バンド全パッケージで9ヵ所まわることって日本でなかなかないですよ。同じバンドでパッケージでまわる、これ自体が海外のスタイルというか。俺たちが何故Miss May Iを呼んだのか、何故海外のバンドを入れたのかっていう理由も含めて観てほしい。それって日本のシーンの活性化にも繋がるし、これだけお客さんが沢山いてキッズがいるのに洋楽のところにお客さんが入らないっていうのも寂しいし、もっと日本のバンド、海外のバンド、世界のバンドを繋げたい。そういう意味がありますね。
●それが自分たちの未来へも繋がるという。
Ken:所謂グローバル化ですよね。
●そしてcoldrainなんですが、以前から対バンはしていたと思いますが、彼らはついこの間までヨーロッパへ行っていましたよね。Crossfaithと同じフィールドに立ったというか。Crossfaithから見てcoldrainはどういう存在ですか?
Ken:ライバルですね。
●お、即答した。
Ken:昔から対バンしているし、いわゆる海外志向のバンドって少なかったから、初めて対バンしたときにすごく共鳴して。ちょっと音楽性は違いますけど、当時から「coldrainかっこいいな。いいバンドだな」って思ってました。
●coldrainも「海外で」と常々言っていましたよね。
Ken:そうですね。それでようやく…だから本当にライバルですね。日本のバンドの中でいちばんのライバルです。
●いちばんライバル視していると。
Ken:いちばんライバルだし、いちばんの仲間だと思っています。向こうはどう思っているか知らないですけど。「俺らの方がかっこいいし」と思っているかもしれないですけど(笑)。
●ハハハ(笑)。思ってそう(笑)。
Ken:coldrainを観て「かっこいい」と思わないお客さんは居ないでしょ。そういうバンドだと思います。Pay money To my PainとかGUNDOGを聴いた時の感覚に近い。Masatoはめっちゃ素直だし、めっちゃ真面目。激ストイックだし。真似できないなと思いますもん。日本で尊敬しているヴォーカリストの1人です。日本でいちばん尊敬しているんじゃないかな。
●“OUTBURN TOUR”が楽しみですね。
Ken:絶対ヤバイですよ。毎晩パーティーじゃないですか。
●しかも各地のゲストたちも猛者揃いという。
Ken:豪華ですよね。喰われないようにがんばらないと。…まあ喰われへんけどな(笑)。
●ハハハ(笑)。負けず嫌いだ。
Ken:そりゃそうですよ(笑)。ヘッドライナーなのにゲストバンドに負けたらダサいでしょ?
●ところでCrossfaithのライブは、感情の緩急がかなり激しいと思うんです。冷静な時とめっちゃ激しい時って、ステージングが全然違いますよね。
Ken:そうですね。昔は上手くできなかったんですけど、今はできるようになってきたって感じです。昔はMCとかめっちゃ可愛かったし。初めてライブした時とかお互いヤバかったですもん。
●coldrainと初めて対バンしたとき?
Ken:はい。Masatoもすごく可愛いMCしていました(笑)。
●可愛いバンド同士が対バンしていた(笑)。
Ken:“強くなりたい”と思っている可愛いバンドが(笑)。
●ハハハハ(笑)。
Ken:でも感情の起伏といえば、去年の“SUMMER SONIC”でちょっとトラブルがあって、俺らはO.Aだったんですけど出演時間が削られて25分の予定が12~3分しかやれなかったんです。「なんで削られなアカンねん! おかしいやん!」ってなって。でも、そういう感情はライブに使えるんじゃないかと。
●ネガティブな感情をライブではプラスにできると。
Ken:特にフェスティバルに於いては“誰が事件を起こせるか”みたいなところがあるじゃないですか。誰がお客さんに対して印象を残せるか。だからいつもはしないんですけど、“SUMMER SONIC”の時は俺のMCからライブに入ったんです。「俺は怒っている」って。
●実際に言ったんですか?
Ken:言いました。「俺は怒っている。諸事情で10分しかライブ出来なくて本当に申し訳ない」って。俺が客の立場だったら、そういう瞬間に「うぉぉ!」ってなる人だから。
●ライブハウスはそれが許される場所というか。怒りとかネガティブな感情をプラスできますよね。激しい怒りの曲を歌っているのに客が笑って暴れていることがありえる。
Ken:もちろんジャンルによりますけど、ライブハウスに何しに来ているかっていうと、暴れに来ているわけで。俺らのジャンルは発散してなんぼだと思うし。だから俺らもお客さんもそうだけど、音楽に自分の感情を乗せることが重要で。もちろんケガはしちゃいけない。でもケガのひとつふたつも勲章だと思うし。ライブって面白いですね。何が起きるか分からないから。
●そして“OUTBURN TOUR”の後はヨーロッパでのフェスが控えてますね。
Ken:6月の“Download Festival”は夢だったんですよ。世界最大級のメタルフェスティバル。いちばん目標としている場所だったから。しかもメインステージなんです。日本でメインステージに出たのはTHE MAD CAPSULE MARKETSだけなんです。
●快挙だ!
Ken:この前KYONOさん(THE MAD CAPSULE MARKETS/Vo.)に会って「今度“Download Festival”に出るんです」って言ったら「ようやくだね!」みたいな感じで言ってくれて。THE MAD CAPSULE MARKETSを超えたいですね(笑)。ようやく同じ土俵に立てたというか。SlipknotのDVDで“Download Festival”のライブ映像を観て「俺らもここで…」みたいな。バンド的な大きな目標のひとつに“Download Festival”のトリでライブする、というのがあるんです。
●ということは、まさに夢を実現している途中だと。
Ken:そうですね。第一歩。
Interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:馬渡司