名古屋発4ピースロックバンド・04 Limited Sazabysが、3rdミニアルバム『monolith』をリリースする。前作の2ndミニアルバム『sonor』では日本語詞を大胆に導入し、メロディックパンクに囚われないキャッチーな楽曲で幅を広げるなど、意欲的な試みを見せた彼ら。そこを契機に全国的な知名度が飛躍的に向上する中で、リリースツアーも各地でSOLD OUTを連発し、オーディエンスを熱狂の渦に巻き込んできた。期待値も高まる中で完成した新作は、持ち味のグッドメロディと独特の世界観を持った歌詞に磨きをかけたキラーチューン満載の会心作だ。
●前作のミニアルバム『sonor』リリース以降、周囲の反響も含めてすごく良い状況になってきたなと。
GEN:調子は良いですね。状況がだいぶ変わったと思います。ライブの動員も増えたし、Twitterとかの反応を見ていても今は爆発的に広がっている感覚があって。
HIROKAZ:すごく良い感じに上がってきていますね。
KOUHEI:CDを出すことで、こんなに変わるんだなと。まだ前のレーベルに所属している時に僕は加入したんですけど、当時はライブに来てくれるお客さんも毎回同じ人ばかりの印象で。でも『sonor』を出してからは全然知らない人が増えて「どこで知ったんだろう?」と思うくらいなので、そういうところですごく実感しましたね。
●前作は日本語詞を導入したりと、ある意味で冒険した作品だったと思うんです。それによって、今までのファンが離れてしまう恐れもあったわけで。
GEN:それは僕らも考えたので、ちょっと不安な部分はあったんです。でもあえて全編日本語の曲(「Now here, No where」)を1曲目にして、そういう人たちをビックリさせようと思って。実際やってみたら、広がりしかなかったんですよ。知らないバンドやお客さんからも良いと言ってもらえたし、そこで新しく知ってくれる人がたくさんいたので「日本語は良いな」と思いましたね。
●それがこの方向で間違っていないという自信にもつながったのでは?
GEN:確かにそれはありますね。出す前は自分でも「ひょっとしたらダサいんじゃないのかな?」って、心配だったりもしたんですよ。でも今は誰の顔色をうかがうこともなく、好きなことをやれば自分たちの色になるって思える。最初にCDを出した時なんて右も左もわからなかったから、どこまで自分の意志を伝えていいのかもわからなくて。あんまり時間もない中で、気付いたらCDができていたという感じだったんです。今回はみんなでイチから作り上げて、良いものができた感覚があります。
●今回の『monolith』は、前作で自信を得た方向性の延長線上で作っていった?
GEN:その方向性を拡大しつつ、もっと新しいこともやろうという感じでしたね。でも根本的に自信があるのはメロディなので、そこは崩したくなくて。メロディが良くて、耳馴染みも良い作品を作るという前提の上で好きなことをやろうと思っていました。お客さんも僕たちがやっていることなら、「これが04 Limited Sazabysだ」と思ってもらえるだろうから。
●メンバーの結束も増しているのでは?
KOUHEI:そこは実感していますね。僕はライブ中にメンバー3人を後ろから見ているわけなんですけど、誰か1人がダメだとみんなダメになるんですよ。逆に、誰か1人が良いと全体も良くなることが多くて。良い意味でも悪い意味でも、“バンド”としてステージで見せられるようになってきたなと思います。
GEN:“バンドをやっている”っていう感覚はありますね。一緒にやっていて、どんどん状況が良くなっていくのは実感していて。曲作りに関しても昔は僕が1人で構成を全部考えていたんですけど、今はメロディやフレーズをスタジオでイチから作り上げたりもして、みんなで曲を作っている感じがするというか。
●前作で初めて、セッションしながら作ったりもしたんですよね。今回はそういう形で作った曲が多い?
KOUHEI:半分くらいはそうですね。たとえばM-3「nem…」やM-4「Chicken race」だったりとか。M-5「Wednesday」を作っている時は、GENがスタジオにいなくて。最初にコードを1回だけ弾いてもらって、そこに一番合うテンポやビートを他の3人で試しながら作っていったんです。
GEN:僕からはコードを先に投げておいて、あとは3人で作ってもらいました。でも最終的には結構変えたんですけどね(笑)。今はサビのメロディだけ僕が作ってきて、全体の構成はみんなで作ることが多いんですよ。時間がなかったというのもあるんですけど、とにかくどんどんアイデアを出していく感じで。
●制作時間があまりなかった?
GEN:今回のレコーディングは去年の10月頭から11月にかけてだったんですけど、9月末までツアーをやっていて。10月もツアー中と変わらないくらいライブをやっていたので、その中で曲を作るのは大変でしたね。
●ストックはなかったんですか?
HIROKAZ:前作で全部出し切っちゃいました(笑)。10月頭の段階では、まだ2曲くらいしかなくて。
KOUHEI:それで本当に「ヤバイ!」となった時に、M-1「monolith」ができたんです。そこから全てが上手く行き始めて、最後にM-2「midnight cruising」ができたという流れですね。
GEN:追い込まれると、意外と良い曲ができるんですよね(笑)。前回の「Now here, No where」もギリギリにできて。レコーディング前日くらいに歌詞も書いていたけど、気付いたらMVにまでなっていたんです。追い込まれた時に生まれるアイデアみたいなものがあるんだなって思います。
●「monolith」は、「Now here, No where」で切り開いた日本語路線をさらに推し進めた歌詞ですよね。
GEN:そうですね。日本語でしか表現できない部分が面白いなと思っていて。僕自身も細かい表情を付けられるようになったこともあって、歌にしても言葉の選び方にしても「やっぱり日本語かな」となりました。
●表現の仕方も変わってきている?
GEN:昔はカッコつけて「良いことを言おう」みたいなところがあったんですけど、今なら恥ずかしがらずにダサいところも見せられるというか。ネガティブなことも全部包み隠さず、今の自分をありのままに表現できるようになった。それが大きいですね。
●とはいえ、歌詞はストレートな表現より、色んな解釈ができるものが多いというか。「monolith」も恋愛の歌っぽいけど、実は違ったりする?
GEN:「聴いた人は恋の歌だと思うんだろうな」とは考えながら作っていますね。僕もヒネくれているので(笑)、恋愛じゃないことも恋愛っぽく解釈されるように表現したりしているんです。日本語になったことでダイレクトに言葉が伝わるので、あえて抽象的にしたり、わかりやすくない表現にしたものもあって。
●「monolith」の“君以外に何を望む”という部分で、“君”というのも女の子とは限らない?
GEN:それは音楽のことですね。曲ができなくて相当追い詰められている時に、スタッフから「次のアルバムが勝負」だと言われたりもして、どんどん「ヤバイ!」となっていって…。
HIROKAZ:プレッシャーを掛けられまくっていましたね(笑)。
GEN:そんな中で、人生で一番バンドを辞めたい気持ちにまでなって…。「なんでこんなにつらいのにやっているんだろう?」と考えた時に、「やっぱり音楽が一番好きだな」と思って書いた歌詞なんです。まさに「その時にしか書けないことを書く」っていう感じでしたね。
●そのくらい追い詰められていたと。
GEN:お客さんからも次への期待がある分、プレッシャーもあって。「もし次にダサいものを作ったら、今まで積み上げてきたものが全部なくなってしまうんじゃないか?」という気持ちをあえて恋愛のように脚色して書いたんです。この曲ができるまでは全体的にポップな曲が揃っていたけど、前作までの疾走感や勢いを感じさせる曲がない状況で。「monolith」ができたことで作品全体も一気に締まって、「これは行けるぞ!」っていう空気に変わりました。
KOUHEI:「monolith」が良い起爆剤になったのかなって思いますね。
●ちなみに最初にあった2曲というのは?
GEN:M-6「Touch your shape」とM-7「hello」は、『sonor』を出した頃にはあった曲ですね。でも、その時の形とはかなり変わっていて。
HIROKAZ:今の自分たちに合わせて、アレンジされたっていう感じです。
●「Touch your shape」はRYU-TAくんの歌がフィーチャーされている曲ですが。
RYU-TA:…自分が出てくる曲があっただけでも良かったです(笑)。
●控えめですね(笑)。こういったメロディックパンク調の曲は、今でも持ち味の1つではあるのかなと。
GEN:やっぱり僕らの根底にあるのは、90年代の“AIR JAM”とかなので。そういうものに憧れてバンドを始めているので、メロディックパンク的な良さは出したいんですよね。この曲は2年くらい前からあったんですけど、コードもキーも歌詞も変えたので原曲とは違う感じになったかなと。
HIROKAZ:あんまりライブでもやっていなくて、お蔵入りしていた曲だったんですよ。それを今回「もしかしたら良くなるかも?」という感じでイジってみたら…。
KOUHEI:サクッと作ってみたら、意外と形になったというか。実はレコーディング直前までAメロもGENが歌っていたのを、当日にRYU-TAが歌ってみたら「意外とイケるね」ということになったんです。
RYU-TA:そういう感じでした。
●「hello」も今作のラストを飾っているということで、重要な曲なのでは?
KOUHEI:『sonor』を出した頃にはあったけど、何となく「こんな感じ」というくらいでまだ形にはなっていなくて。それに「もっと真剣に取り組んでみよう」というところから生まれた曲ですね。
GEN:『sonor』から『monolith』までの期間での成長感は、この曲に一番現れているんじゃないかな。『sonor』で吸収したものが出ている感じがします。
●この曲もほぼ全て日本語詞ですが。
GEN:最初に浮かんだ歌い出しが日本語っぽいメロディだったので、そこから膨らませていった感じですね。自分の中でちゃんとゴールまで辿り着いたという感覚があって、この歌詞はすごく気に入っています。
●追い詰められたりもしつつ無事に完成させた今作ですが、タイトルを『monolith』にした理由とは?
GEN:“石碑”という意味なんですけど、日本語って僕の中では四角いイメージがあって。メロディもカクカクしている感じがするし、今回は日本詞が増えたというのもあって『monolith』という単語がカチッとハマるなと。
●“石碑”の四角いイメージと、歌詞やメロディの印象が重なったわけですね。
GEN:あと、スタンリー・キューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』にも、“モノリス”が出てくるんですよ。猿がモノリスに触れることで、物が使えるようになったり進化を遂げていくシーンがあって。僕としても日本語を多く取り入れて進化した飛躍の1枚なので、今回は『monolith』というタイトルにしました。
●自分たちの進化を実感できる作品になった。
RYU-TA:そういう感覚が本当にありますね。
KOUHEI:全体のバランスもすごく良いし、「これが04 Limited Sazabysだ!」って言い切れるようなものになったなと。『sonor』はまだ自分たちの中で若干揺らいでいるところもあったけど、『monolith』は突き抜けた感覚があって。まさに進化を遂げた作品になったと思います。
●音源だけじゃなく、ライブも進化しているのでは?
GEN:やっぱり僕らはライブを中心に活動してきたバンドなので。「この曲はライブでこういうリアクションがあるだろうな」とかイメージしながら作った作品なので、ライブでやって完成する感じですね。
RYU-TA:ライブで見せていきたいところもあるし、自分自身がもっと楽しみたいんですよ。そこをもっと追求していって、『monolith』のツアーではみんなで遊びたいなと思っています。
KOUHEI:「そういうノリ方もあるんだ!?」みたいな感じで、お客さんが僕らの予想を超えてくる場合もあるんですよね。バンドとお客さんとでグルーヴを出して、1つのものを作り上げていけるように今回のツアーは頑張りたいと思います!
Interview:IMAI
Assistant:馬渡司