限界を超え、すべての境界線を無くすことを目的としたライブハウスサーキットイベント・REDLINE。“Warped Tour”で目の当たりにした奇跡を日本のライブハウスで起こしたいという主催者の想いから2010年にスタートした同ツアーは、毎年全国各地のライブハウスで開催され、数多くの奇跡を生み出してきた。普段顔を合わせることがない、ステージを共にすることがないアーティストたちが一同に介して生み出す化学反応。なんと今回は、東京・恵比寿LIQUIDROOMにて10日間連続で開催するという。2回目のREDLINEカヴァー号となる今月号では、“限界を越え、すべての境界線を無くす”というREDLINEの主旨に賛同し、REDLINEに関わっている様々な立場の“表現者”を迎えた3組の対談を敢行。シーンとカルチャーがクロスオーバーする瞬間を目撃せよ。
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REDLINE主催 / Deviluse Press スズキケンタロウ
Deviluse General Manager Ai Kubota
Deviluse Director / Designer Daisuke Hirata
CDの流通会社、株式会社ジャパンミュージックシステム(以下、JMS)のスズキケンタロウ氏が立ち上げたライブハウスサーキットイベント・REDLINEのオフィシャルグッズは、ストリートブランド・Deviluseがデザインを担当している。Deviluseといえば今やロックシーンでは知らない人が居ないほどのストリートブランドだが、前述のスズキ氏はDeviluseのプレス担当としても活動しているという。REDLINE TOUR 2013特集第1弾は、REDLINEとDeviluseに携わる3人に訊いた。
●Deviluseの成り立ちはどういうものなんですか?
Ai:Deviluseは1999年にスタートしたブランドなんですけど、最初は私たちが関わっていなくて、渋谷のロックショップのオリジナルブランドとして始まったんです。当時のコンセプトは“安めのブランド”というもので。1999年頃はロックブランドが盛り上がっていて価格的に高めの商品が多かったんです。私はライブによく行っていて、洋服買いたいなと思ってロックショップに行ったらすごく高くて、なかなか気軽に買えなくて。それである日、渋谷のロックショップに行ったら、バンドTシャツでもないよくわかんないTシャツがすごく安く売っていて。聞いたらそのお店のオリジナルブランドで、それが始めたばかりのDeviluseだったんです。
●ロックショップのオリジナルブランドとして始まったと。
Ai:Hirataは当時バンドをやっていたんですけど、私とは高校の頃からの友達で。よくよく聞いてみると、Hirataの知り合いがそのお店の店長だったんです。
Hirata:それから3年くらい経って、そのお店は閉店することになったんです。店長はデザインの勉強をするためにアメリカに行くことになって、Deviluseとしての活動ができないと。そのときにAiちゃんが「私がやりたい」と言って、2002年からAiちゃんがDeviluseのゼネラル・マネージャーになり、デザインは僕とアメリカに行った元店長が担当することになったんです。
Ai:当時から自分が着たい服にプリントしてもらっていたんですけど、それが無くなるのは困ると思ったので「私がやる」と。
Hirata:当時、ロックブランドのレディースラインってあまりなかったんですよ。だからAiちゃんは「自分で作ってみたい」と。そこから“男女共に”というコンセプトでDeviluseを再度旗揚げしたというか。
スズキ:Aiちゃんはすごく真面目で嘘がないんですよね。だからこそDeviluseが10年以上続いていると思います。
●そんなDeviluseが、REDLINE主催であるJMSのスズキさんと出会ったのは?
Hirata:出会ったのは2010年ですね。
スズキ:最初の“REDLINE TOUR 2010”開催の3ヶ月くらい前だね。僕はJMSでFACTを担当していて、当然FACTのライブに行ったらDeviluseがブースを出していて、そのときにAiちゃんを紹介してもらったんです。で、僕は前からネットでDeviluseの商品を買っていて好きだったので、ちょうどいいと思って「“REDLINE TOUR 2010”のオフィシャルグッズをデザインしてほしい」と頼んだんです。それでいろいろ打ち合わせをして、“REDLINE TOUR 2010”ではオフィシャルグッズ販売として一緒にまわってもらったんです。そこからですね、一気に深まっていったのは。Deviluse自体ももっと盛り上げなきゃっていうときだったし、REDLINE単独でDeviluseをフックアップできるほどイベントは浸透していなかったので、3人で色々と話し合ったんです。
●ふむふむ。
スズキ:僕はJMSに所属しているし、2人も他に仕事をしていたので、夜な夜な仕事が終わったあとにDeviluseのプレスルームに集まってミーティングして。ファッション誌や媒体向けにどうやってアプローチするかとか、Deviluseの持ち味であるフットワークの軽さを活かして、いろんなイベントにブースで出ていこうとか。その結果、JMSとDeviluseが一緒にやっていこうということになったんです。
●ブースを出すというのはDeviluseのコンセプトなんですか?
Hirata:そうですね。2002年にお店が無くなってしまったので、どこで販売するか? と考えたとき、当時は今のようにネット販売が普及していなかったこともあって、ネットとライブハウスで販売していこうと。それを今もずっとやってる感じですね。そういうブランドがあってもおもしろいんじゃないかなって。地方とかも行って。
●今年もREDLINEにはDeviluseのブースが出るとのことですが、たくさんのライブに行っているAiさんとHirataさんから見て、REDLINEはどういうイベントだと思いますか?
Hirata:いちばん感じるのは、スタッフがすごく楽しそうにワイワイやっているのが他と違うなって思うところですね。
Ai:スタッフがみんな仲良くて楽しそうなんですよ。それによって現場がすごくいい雰囲気になっていて。あと“すべての境界線を無くす”というREDLINEのコンセプトにもあるように、REDLINEに行くと勉強になるんです。例えば去年だったら名古屋ではアイドル(BiS)が出ていて、最初は「え?」と思ったんですけど、実際にライブを観たらすごく良くて、「こういう人たちが居たんだ!」って新しい発見があったんです。私は個人的にもよくライブを観に行くんですけど、自分の好みだからある程度決めちゃっているんですよね。でもREDLINEはそれ以外の体験ができるっていうか。2010年からREDLINEとご一緒させていただいていますけど、それまで私が知っていたものとは全然違うシーンも楽しめる。それで今度そのバンドさんのライブに行ってみようかなと思ったり、フェスに行ったらいろんなアーティストを観てみたり。REDLINEのお陰で視野が広がりました。
Hirata:いいこと言ってるな(笑)。
スズキ:主催としては何も言うことないです。100点です。
●ハハハ(笑)。今年のREDLINEオフィシャルグッズのお勧めポイントはどこでしょうか?
Hirata:僕としても今年は恐怖の10DAYSなんです。客層も読めないし。
スズキ:うんうん。そうだね〜。
Hirata:だからテーマを“恐怖”にしたんですよ。ホラーチックなデザインで。そこを是非チェックしてほしいですね。今年のラインナップとしてはTシャツ2種類とタオルを用意したんですけど、Tシャツは、1つはすごくシンプルなデザインで白と黒、もう1つは派手めなデザインで黒と赤にしました。今はいろんなイベントTシャツのデザインをやらせてもらっているんですけど、REDLINEは僕が初めてデザインさせてもらったイベントなんですよね。だからREDLINEには想い入れも強くて。自分の原点に戻るっていうか、1年毎に帰って来る感じがあるんです。
スズキ:MAC(Hirata)は感性がすごく豊富なんです。MACにはDeviluseだけじゃなくて、いろんなデザインをやってもらっているんですけど、どれもめっちゃかっこいいんですよ。バンドからの反応もすごく良くて。今年のグッズもマジお勧めなので是非チェックしてほしいですね。
●ちなみに、今年は恵比寿LIQUIDROOMで10日間連続開催ということですけど…なんでこんなことを?
スズキ:実は10日間の“10”というのは、今年JMSが10周年だからなんです。
Ai&Hirata:ああ〜!!
スズキ:別に祝ってほしいわけじゃないから誰にも言ってないですけど、本心はそこなんです。そもそも10日連続でやるということは、去年の“REDLINE TOUR 2012”中に決めていたんです。更に、いちばん最初にREDLINEをやった恵比寿LIQUIDROOMでやりたいなと。個人的にも大好きなハコだし、Deviluseも今まで何度もブースを出しているハコなんですよ。すごく嬉しかったのは、今年のラインナップを公表する前から10日間通し券を買ってくれる人が結構居たんです。10日間通し券にオリジナルTシャツを付けてやってみたらかなり反響があったんですよ。嬉しかったですね〜。
Hirata:え? どのTシャツが付くの?
スズキ:オフィシャルの色違い。…そうだ! 通し券分のTシャツをMACに発注するの忘れてた!
●え?
Hirata:間に合うのかな(※取材は9月下旬)…今日すぐ発注しよう。
スズキ:マジで危ねぇ! 気づいてよかったー! 通し券を買ったお客さんにガチでキレられるところだったー!
●「よかったー!」じゃねぇよ!
一同:アハハハハハハハ(爆笑)。
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ircle 仲道良
映像監督・脚本 池田圭
ircle 河内健悟
REDLINEの映像を撮り続けている池田圭監督は、AIR SWELL、AK-69、AYUSE KOZUE、BROWN SUGAR、COUNTRY YARD、DS455、DJ PMX、EMI MARIA、FATPROP、HEAVY CLAFT、 ivory7 chordなど数多くのアーティストのミュージックビデオを手掛けながら、舞台演出・脚本家としても活動している。ircleが7月にリリースしたミニアルバム『さよならリリー』収録「バタフライ」のMVも池田監督によるもの。REDLINE TOUR 2013特集第2弾は、ircleの河内・仲道、そして池田監督の3人に、表現者としてのこだわりを訊いた。
●池田監督はircleの「バタフライ」のMVを撮られたとのことですが、撮影はどうだったんですか?
河内:めちゃめちゃスムーズでした。僕らは今まで知り合いにずっと撮ってもらっていたんですが、池田監督は最初から最後までずーっといいテンションで。
池田:とは言え、撮影時間は結構長かったですよね。10時間くらいかかったかな。僕はircleを“REDLINE”で1回観てるんですよ。イベント全体を撮らせてもらったんですけど、かっこいいバンドだなって思って、その後にMV撮影の話を頂いてラッキーだなと。「バタフライ」のMVは僕もすごく好きな作品なんです。個人的にすごく想い入れもあるし、スタッフにもすごく好評で。
河内:池田さんがMVを撮るときはどういうことに気をつけているんですか?
池田:以前は、音楽に乗っかれてなかったなと思っていて。今思い返すとそう感じるんですけど、自分がやりたいことが先行していたんですね。でも最近は、音楽に乗っかるようにしています。音を聴いて“こういう映像だな”とイメージを膨らませるというか。その曲を作っている人たちが何を考えて作って、どういう風に見せたいのか。そこをまず考えるようにしています。“映像作品”として考えちゃうと、肩に力が入っちゃうんですよね。今まで何本もいろんなアーティストのMVを撮らせてもらってきた中で、そのバンドがいちばんかっこよく見えるもので、その曲がいちばんかっこよく聴こえるものにすべきなんじゃないかなって思っています。
●「バタフライ」のMVには、ircleのメンバー以外に男女が1人ずつ登場しますよね。あの登場人物が映像にすごく深みを出していて。
池田:あれは、「バタフライ」の歌詞がすごく特徴的だという印象を受けたからなんです。
河内:ストレート風で実はストレートじゃない歌詞ですよね。
池田:簡単には読み取れないというか。
河内:そうそう(笑)。僕らはわかりやすい歌詞が多いんですけど、「バタフライ」は意味深なままでいいかなって。
池田:だから、要するにヒントが少なかったんですよ(笑)。いざMVを撮るときに“どうしよう?”と考えたんですけど、JMSのプロデューサーであるスズキさんと話していて「女性を出したい」ってポロッと言われたんです。
河内:あ、それ、僕がスズキさんに言ったんです(笑)。「ヒステリックな女性を出したい」って。
池田:あっ、そうなんですか。
河内:メロディや歌詞から、そういうイメージの映像がいいなと思って。
池田:そうだったんですね。それを聞いて「なるほど」と思って。あともう1人、踊っている変な男が出てきますけど、あれは僕がオーダーしたんです。彼は結構名の知れた舞踏家なんですけど、「バタフライ」を聴いてもらって、「この曲に合わせて踊ってくれ」と頼んだんです。
河内&仲道:へぇ〜。
池田:実は、彼は「バタフライ」を1曲通して踊れるんです。本番では何回も踊ってもらったんですけど、もうぶっ倒れるくらいでしたよね(笑)。
河内:見ていて心が痛むくらい(笑)。踊り辛いだろう曲を、何度も何度も(笑)。
仲道:俺、あのダンサーの人をずっと見てたんですよ。で、気づいたんですけど、「バタフライ」の音が鳴ってない中で踊っていても、曲のどの部分だっていうのがわかるんですよね。
一同:おお〜!
河内:出来上がった映像を観て、すごくいいなと思いました。感動しましたね。最初、音のないところで叫んでいる女性が居ますけど、その時点で感動しました(笑)。
池田:アハハハ(笑)。MVなのに無音で始まるっていうね(笑)。
河内:池田監督が表現をする上で大切にしていることは何なんですか?
池田:僕の場合はすごくシンプルなんですけど、飽きられないこと。MVだったら4分間、映画だったら90分、その間は絶対に飽きさせないということをいつも念頭に置いていて。人の映画とかも観たりするんですけど、作品性ばかり凝っていて、観ていてダルくなるものってあると思うんですよ。
河内&仲道:うんうん。
池田:どんな作品であれ、飽きさせちゃいけないって思うんですよね。話はそれからだなって。飽きないようにみんなに最後まで観てもらって、その上で“おもしろかった”と思ってもらえるもの。メッセージ性も二の次っていうか、それができた後の話だと思うんです。観ている人が常にワクワクしているようなものの連続かなって。緩急をつけて、飽きさせない。それが僕の物づくりのベースになっています。
河内&仲道:なるほど〜。
●池田監督から見たircleはどういうバンドだと思います?
池田:まず最初に“かっこいいな”と思いました。ライブを観たときに思ったんですけど、僕はもともとすごく音楽が好きで、バンドマンになりたかったけど挫折したクチなんですよ。だからかっこよくて、羨ましかった。いろんなバンドを観る中で“かっこいいな”とか“上手いな”とか“すごいな”とか、変な話“売れそうだな”と思うことがあるんです。そんな中で、ircleは“かっこいいな”と思いました。“羨ましいな”って。
●それは単に音楽や演奏力だけじゃなくて、振る舞いとか含めてなんでしょうね。
池田:もちろんそうです。ドーン! とステージで音を鳴らした瞬間に“うわ! かっこいいな!”って。“羨ましいなぁ”って(笑)。
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MY FIRST STORY Hiro
Photographer 鈴木公平
REDLINEのオフィシャルカメラマンとして同ツアーのライブ写真を撮り続けてきたPhotographer・鈴木公平氏。出版社に所属するカメラマンだった同氏は、独立した年にCDデビュー直前のMY FIRST STORYと出会い、以来彼らのアーティスト写真やライブ写真を撮り続けている。写真と音楽という違うフィールドにありながら、表現の美学に不思議な共通点を持つ両者。REDLINE TOUR 2013特集第3弾は、それぞれ違う立場から“ライブ”に関する想いを訊いた。
●Hiroくんは、鈴木さんの写真にどういう印象を持っていますか?
Hiro:僕は結構ライブの写真を見るのが好きなんですよ。自分たちの写真だけじゃなくて、いろんなアーティストの。でも正直に言うと、あまり好みの写真がなくて。それで、僕たちがO-WESTでライブをやったときに公平くんが撮ってくれたんですけど、その写真がどのカットも全部ドンピシャで。
鈴木:おおっ。
Hiro:光の加減とか、もう全部がかっこよくて。「これヤバいね!」ってマネージャーと話したんです。「これからは撮ってもらうとしたら公平くんだね」って。
鈴木:飯食いにいく? 何食べたい?
●ハハハ(笑)。
Hiro:公平くんの写真はめちゃめちゃ好きなんです。僕はかっちりとまとまりすぎた写真はあまり好きじゃないんですよ。要は、ちょっとライブ感が出ていて、生々しい写真の方が好きなんです。でも、生々し過ぎても嫌で。ちょっと微妙なんですけど、生々しすぎず、非現実っぽさも出ているものが公平くんの写真には多いんですよね。
鈴木:僕自身、がっちりと作りこむキャラじゃないと思っていて。かと言って、勢いだけでは撮りたくない。僕は名前が“公平”という通り、バランスというものを常に考えているんです。それは性格でもあるし、「どっちつかずだ」と言われることもあるかもしれないけど、僕の中ではバランスを意識して写真を撮っているんです。
Hiro:へぇ〜。
鈴木:雰囲気重視のイメージカットと呼ばれるようなものばかり撮っていたら「誌面に使い辛い」と言われるだろうし、でも見せすぎる写真も面白味に欠けるしっていう。
●Hiroくんの考え方とすごく近いというか、ドハマりしてますね。鈴木さんから見たMY FIRST STORYというバンドの魅力は何だと思いますか?
鈴木:初めてライブを観たときから思っていたのは、まとまりきってないからこそすごく先が楽しみになる感じというか。いい意味で荒削りで、だけどその中にメンバーそれぞれのマインド…闘っている感じがあって。荒削りなりに闘っている感じがすごく好きなんですよね。だからこそ自分も“一緒に闘いたいな”と思わせてくれるんです。だから、ただ写真を撮っているんじゃなくて、一緒にやっている感覚なんです。毎回毎回かっこいい曲を作ってくるから“ヤラれたな”と思うし、だからこそ僕もがんばろうと思うし。毎回、現状に満足していないんだなっていうのもわかる。
Hiro:うんうん。
鈴木:ギターのShoくんは僕と同い年で、最初に撮らせてもらったときから何度か飲みに行ったりしてるんですけど、そこで「先輩たちに負けないようにがんばろうぜ」という話をしたりして。
●MY FIRST STORYのライブはそういう内面性がすごく見えますよね。
Hiro:その場でしか経験できないことっていうのがライブだと思っているので、1回1回のライブを大切にして、その空間で感じることを発していけたらなと思っていて。ディズニーランドって行ったら絶対にテンション上がるじゃないですか。その感覚に近いんですよ。例えあまり気分が乗っていなくても、ステージに上がった瞬間に無意識的にスイッチが切り替わるし、あの30分間でしか得られない快感っていうのはすごくあるんです。だから僕にとってライブは、心から好きと思えて、真剣に向き合えて、自分にとって大切なもの。たかが30分だろうが、その場でしか得られない快感と、ライブにある眼に見えない力を僕は信じているんです。
鈴木:なるほど〜。
●ライブは限られた時間だし、同じことは二度と起こらないじゃないですか。カメラマンの立場からすると、ライブを撮るのは大変だと思うんですが…。
鈴木:ライブ写真に関しては、僕は“プロ”ではなくて“ハイ・アマチュア”だと思ってるんです。カメラマンさんによってはバンドマンの目線で撮っている方もいらっしゃいますけど、僕はお客さん目線で撮っていたいと思っていて。だから自分のポイントはお客さんが観ているものというか。いちばんバーンと盛り上がったキメのところとかは当然撮りたいですけど、例えばMCでふっと空気が止まっているような瞬間があったら手元や脚元を撮ることもあるんです。だからさっきHiroくんが「生々しすぎず、非現実っぽさも出ている」と言ってくれたのがすごく嬉しくて。僕はバンドマンでもないし音楽のことは全然詳しくないんですけど、自分なりの“かっこいい”と思うところはあって、その感覚で撮っています。
Hiro:カメラマンとかバンドマンとか絵を描く人って、エゴに走り過ぎちゃダメだと僕は思うんです。アーティストと言っても、評価してくれるのはお客さんじゃないですか。その人たちがどうすれば喜ぶかっていうのは意識するべきだと思うし、実際にそういうことを考えて僕らは曲を作っているし。そういう意味では、カメラマンの場合はお客さんの記憶に残っている残像を形にするのが写真だと思うんです。それを上手いバランスでできる人っていうのはあまり居ないと思うんですよね。だから公平くんのバランスの取れた写真がすごく好きなんですよね。
鈴木:感覚が近かったんだね。
interview:Takeshi.Yamanaka