昨年4月にリリースした1stミニアルバム『DICHOTOMIC』が初音源にして各所で話題を呼び、周囲の期待値が高まる中でFAKE FACEが待望の2ndミニアルバムを7/17にリリースする。前作リリース後に数々のツアーやコンピレーション参加を経て、オリジナリティに磨きをかけてきた彼ら。特徴である妖艶なギターをフィーチャーした独特の雰囲気溢れる楽曲は、まさしく『OPERA』という作品タイトルにふさわしい。繊細で甘く切ない歌声と強力なフックを持ったメロディを軸に、哀愁感漂うサウンドと重ねた今作は彼らにとって新たな出発点となるだろう。
●前作の1stミニアルバム『DICHOTOMIC』が初の作品だったわけですが、自分たちにとってはどんな作品だったんでしょうか?
k-sk:結成して2年くらいでようやく出せた1枚目の作品だったんですけど、今振り返るとガムシャラに作ったという感じがあって。僕とJamesは本格的にオリジナル曲を作るのはこのバンドが初めてだったというのもあって、今に比べたらまだまだ自分たちらしさを出しきれていなかったのかなと思います。
James:前作ではまだ曲を作る経験も未熟な状態だったので、みんなもまだわからない部分が大きいままで制作していて。その中でもリード曲になった「Stay With Me」みたいな、みんなのグルーヴが詰まった良い曲を1つ作れたのは大きかったですね。
k-sk:あの曲ができたことで変わった部分は結構あります。本当にあの時にしかできなかったことが全部出ているようなアルバムでした。
●リリース後のツアーで得たものもあったのでは?
k-sk:ツアーはそれがほとんどと言ってもいいくらい、デカかったです。先輩バンドの人たちから得られる刺激が勉強になるので、どれだけぶつかっていって、どれだけ吸収して自分のものにできるかっていうところをツアーでは大事にしていましたね。
James:カッコ良いバンドを見るとズタボロにされた気持ちになるんですけど、そうなった後に曲ができたりもして。そのへんにもツアーをやったことの意味が出ている気がします。色んな刺激を受けて、「ようやく曲で勝負できるな」という気持ちになれたのが今作なのかなと。
●自分たちの曲に自信がついたということ?
James:自分の中で前作は「まだ曲で勝負はできない」と感じたところがあって。勢いはあるけど、純粋に曲だけでお客さんを盛り上げるっていうことはできていなかったと思うんです。SiMやcoldrainとツアーをまわらせてもらった中で刺激を受けてできた曲もあるし、自分自身もギタリストとしてすごく大きく成長できた部分を今回の曲には入れられた。ようやくお客さんや対バンとも、曲で勝負できる作品に仕上がったなと思いますね。
●ツアーの成果が今回の楽曲にも表れている。
k-sk:ツアーも含めて、昨年は40本くらいライブをやったんです。ライブのクオリティを上げる作業をしつつ、自分たちに足りないものや“FAKE FACEらしさとは何なのか?”っていうところを追い求めながらやってきて。それを今ようやく少し確立することができて、作れたのが今作なのかな。
James:ようやくバンドとしての軸が揃ったので、今回の作品がスタートかなという感じですね。
●自分たちが考える“FAKE FACEらしさ”とは?
James:前作を作った頃は自分たちが今後もっとゴリゴリな感じで、今流行りのラウドな音に寄っていくんじゃないかと想像していたんです。でも対バンを重ねていく中で自分たちのオリジナリティというものを考えた時に、他のバンドとカブっちゃうのはダメだなと。そこで自分たちは歌を前面に押し出していこうということになって、今回はメロディアスな楽曲が集まったんですよ。
k-sk:僕らは元々メロディを何よりも大事にしてきたし、メロディの良い曲が好きだったんです。そこを変えるつもりもないし、どれだけ持ち味として活かせるかっていうところが大事かなと。
●確かに今回の作品ではシャウトよりも、クリーンパートが目立ちますね。
k-sk:シャウトに関してはAxYxM(Ba./Cho.)にほとんど任せて、自分はメロディを歌う部分を意識的に増やしました。
James:あと、今回はコーラスワークも面白い感じになっていて。1順目ではAxYxMがコーラスして、2順目では僕がコーラスしていたりもしているんですよ。3人でハモっているところもあったりとか、メロディが推しだったのでコーラスの部分でも色んなことに挑戦しています。
●コーラスワークにも力を入れている。
k-sk:そこも他のバンドに負けたくない部分というか、強みにしていきたいと思っているんですよ。
James:今までは楽器隊の目線だったものが、ボーカル目線に変わったというところがすごく大きくて。今まではフレーズが長かったりとか、楽器先行なところがあったんですよ。そこからボーカルをメインに考えるという視点に、みんなのスイッチが切り替わったのかなと。
●それはいつ切り替わったんですか?
k-sk:前作のツアーを経て消化したものを次の作品に活かそうと考えた時に、自分たちで振り返ってみて。他のバンドからも話を訊いて、自分たちの曲を改めて客観的に聴いてみたんです。そこで邪魔なものを削ぎ落として、より良いメロディとアレンジにしていくという方向にメンバー全員の意識が変わりましたね。「キラーチューンを作ろう」とか「ライブを意識した曲を作ろう」ということをツアーの後で考えた結果が、今作には出ていると思います。
●今回の制作に入ったのはいつ頃?
k-sk:僕らはツアー中に曲を作ったりという器用なことができないので、リリースが決まってから作り始めた感じですね。だから、曲のストックが貯まっていたというわけでもないんです。コンピレーションに参加した2曲は先にあったんですけど、その2曲もツアー後に意識改革がなされた後に作ったもので。あとの4曲はリリースが決まってから新たに作りました。
●と言いつつ、M-1「over and over again」は結成当初からあった曲をリアレンジしたそうですが。
k-sk:これは結成当初からずっとあった曲で、前回のツアーでもよくやっていたんです。その時に先輩バンドの方からサビを誉めて頂んですけど、構成についてはアドバイスをもらったりして。僕ら自身も思い入れがある曲なので、全く変えてしまうんじゃなくてサビを活かした構成に変えてみました。良いところを崩さないまま、上手くアレンジできたかなと思っています。
●この曲の歌詞は、今の心境が出ているのかなと思ったんですが。
k-sk:そうですね。「どこに辿り着くかわからないけど、とにかく前を向いて進んでいくしかない」という感じで前作から進み続けているイメージと、今回の「新たに確立した武器を持って再び立ち向かおう」っていう気持ちが上手くかみ合って書けた歌詞だと思います。前作は普遍的なことを歌おうと意識しすぎたところがあったんですけど、今回はテーマを絞って書けました。1曲1曲の歌詞が持つ要素もちゃんとお客さんに伝わるようなライブの運び方を、今回のツアーではしたいなと考えています。
●伝えたいことが明確になった?
k-sk:そういうところもありますね。「ライブを一緒に楽しんでほしい」という思いがまずあって。あと、感情の高ぶりみたいな言葉では伝えられないようなものでも音楽に乗せれば伝えられるから、そこを今作では上手く表現したいと思っていました。前作の時は何も考えていなかったというわけじゃないですけど、今回はもっと深いところに行けたというか。
●表現者としても進化していると。Jamesくんもギタリストとして、進化を感じている?
k-sk:僕とJamesは高校時代から一緒にバンドをやっていて、その時からずっと「特徴のあるギタリストだな」とは思っていたんですよ。特に前回のツアーを終えてからは、彼のこだわりみたいなものがより前面に出るようになったと感じていて。Jamesはありきたりなことをやらないというか、「ここでそれが来る!?」っていう場合も多いので、曲作りの時はいつも新鮮で面白いですね。
James:「◯◯っぽい」というのが僕は好きじゃなくて。前例のあるところから引っ張ってくるんじゃなくて、他にはあまりないものに挑戦してみたいという気持ちが強いんです。定番が大事なところはもちろん理解しつつ、他にはない部分を突き詰めていきたいというのが信念というか。そういう気持ちで常に作曲しています。
●FAKE FACEの特徴は妖艶なギターなんですよね。
James:今回はそういうのが前面に出た作品かな。
k-sk:楽曲の持っている妖しい雰囲気は特徴になっていますね。そういう部分は元々あったんですけど、今回は特にフレーズで妖しい雰囲気を出すということを意識しました。
●『OPERA』というタイトルにしたのも、そういう雰囲気から?
k-sk:今回は楽曲の妖しい雰囲気を全体的に出したいというコンセプトの上で揃えた6曲だったから。妖しさや自分たちのオリジナリティを踏まえつつ、今回の作品に合うイメージがないかと考えていた時に映画の『オペラ座の怪人』が浮かんで。歌劇を役者が演じているというところと、ライブで自分たちが素の部分とアーティストとして演じる部分を使い分けているところがマッチするかなと。それでタイトルが『OPERA』に決まって、そこからリードトラックを作ろうとなった時にできたのがM-3「The Phantom Of The Opera」だったんです。
●歌詞の内容的にも原作の映画に近いところがある?
k-sk:歌詞は1人の女の子を主人公にして、「自分の殻に閉じこもっていないで出てきなよ」っていうことを歌っていて。「ライブでは誰でも輝くことができるんだよ」っていう、お客さんに向けたメッセージにもなっているんです。そこを元に原作の映画ともすり合わせしつつ、上手く形にできたかなと思います。歌詞としても挑戦した曲ではありますね。
●アーティスト写真の服装も、タイトルに合わせてシックな感じにしたんでしょうか?
k-sk:そうですね。今、音楽シーンを賑わせているラウドロックというものの中だけでは、自分たちは終わりたくないんですよ。ライブでも音源でも、自分たちのオリジナリティを見せつけられたらなと思っていて。
James:アーティスト写真ではシックな服装をしているんですけど、日常生活ではやっぱりストリートブランドとかラウドロックのシーンに根付いたものが好きなんですよ。そこから離れる気はないけど、音楽性の幅はもっと広げていきたいというか。普段はラウドロックとかを聴かない人でも「FAKE FACEは好き」って言われるようなバンドになりたいですね。
●本当に売れているアーティストって、ジャンルがどうとか関係ないですからね。
k-sk:いずれはJ-POPとかそういう大きな括りの中でも、名前が挙がるような存在になりたいですね。FAKE FACEの音楽をやれれば、カテゴリーは何でもいいんですよ。そこでちゃんと魅了できるものがあれば、ジャンルは関係ないと思います。
●それだけの幅広さと可能性をFAKE FACEは持っている。
James:ラウドロック・シーンの中でも僕らはバンドとして他よりも振り幅が広いんだということを今回で感じられたので、これからも色々とやっていけたらなと思っています。
k-sk:ライブでも音源でもその振り幅を活かしたいんです。どういう方向にも攻められるからこその自分たちらしさみたいなものをもっと確立していきたいですね。
Interview:IMAI