誇り高き孤高の存在、LAST ALLIANCE。結成10年となった2012年を経た彼らが、約2年ぶりとなる待望のアルバムを完成させた。ツインヴォーカルから放たれるメッセージと、類まれなるソングライティングによる芸術性、タフな経験で培ってきたライブを武器に活動を続ける彼らの新作は、メロディと歌に焦点を当てた、今まで以上のポピュラリティと、外に開けたベクトルのサウンドが満載。誰にも汚すことのできない聖域を持ったライブバンドが研ぎ澄ませた七つめの感覚は、我々を新たな世界へと導いてくれる。
●昨年9月にDVD『Welcome to the Alliance』をリリースされましたが、そのころにはもうアルバムの制作に入っていましたよね。今回7枚目のアルバム『Seventh Sense』がリリースとなるわけですが、既に半年前の取材のときには「おそらく次のアルバムはメロディと歌が中心になるだろう」とおっしゃっていて。
ANZAI:そうでしたね。
●実際に今作を聴くと、その通りにメロディと歌が中心の楽曲が多く、更に言えば志向性として開けているベクトルの楽曲が多いと感じたんです。なぜこのタイミングでこのような作品ができたと思いますか?
ANZAI:アルバムの方向付けは、スタッフも含めたミーティングの中で決まっていったんですよ。今までの流れとして、ラウドなものや歌ものの曲もミックスしたアルバムをここ2枚くらい出してきたじゃないですか。その流れでいくのか否か、みたいな。
●近作はライブからのフィードバックが多かったですよね。動的な作品というか。
ANZAI:そうですね。で、自然な流れでいえば今回もまたそういう作品になったんだろうと思うんですけど、アルバム制作にあたって行ったミーティングでは、次はその流れのままではなくて“歌”と“メロディ”と“歌詞”を中心とした…僕らの過去の作品でいえば1stアルバム『TEARS LIBRARY』(2003年7月)から2ndアルバム『UNDERGROUND BLUE』(2004年12月)のようなテイスト…のアルバムはどうか? という話になったんです。バンドとしていろんな側面がある中で、最近はラウド色の強いものが多かったから、今回はそういった要素を色濃く出そうと。
●なるほど。
ANZAI:それで「じゃあもう一度原点に立ち返って、歌詞や歌に焦点を当ててみようか」って。
●最初に言いましたが、今作はすごく開けた印象が強かったんです。それはアルバムの最初にM-1「BLUE BIRD SHERRY」、そして最後にM-12「つぼみ」が入っていることが大きいと思うんです。
ANZAI:ああ〜。
●「BLUE BIRD SHERRY」のメロディとかは特に、今までのLAST ALLIANCEらしさをメロディに残しつつ、サビの開け具合が突き抜けているという印象があって。新鮮だったんですよね。
ANZAI:「BLUE BIRD SHERRY」は僕が持ってきたんですけど、僕が今回意識したのは“懐かしさ”だったんです。それは歌詞もメロディも含めて。
●懐かしさ。
ANZAI:それは“フレンドシップ”とも言えるんですけど。LAST ALLIANCEの4人は今までずっと友達の延長線でやってきていて。その友達が同じ狭い世界の中にずっといると、やっぱり色んなぶつかりがあるんですよ。そういったぶつかりを消化してきた僕らが今みんなに伝えられることは、その“フレンドシップ”や“絆”みたいなものを書くことだと。結局僕らはそこに光を見出しているから、まだまだ走ることができるんです。
●ふむふむ。
ANZAI:楽曲のイメージとしては、そういったことも含めたセンチメンタリズムだったりビターなテイストだったり。そういう“懐かしさ”を意識してメロディと歌詞を作ったんです。
●なるほど。
ANZAI:僕らはすごく自虐的になったり、感傷に浸るようなマインドの楽曲も多いんですけど、そういうことを今回は回避したというか。マイナー調の曲をサラッと聴けるということをメロディとしては意識したし、歌詞も懐かしめるようなものにしたかった。
●あまり湿度を入れなかったということ?
ANZAI:そうですね。自分よがりの想いや感情ばかりを書くということもあるんですけど、今回は意識してそういうことをやめた感じはありました。
●意識的にそうしたんですね。
ANZAI:今までは自分が思ったことをバーッと書いておいて後で整理するという書き方だったんですけど、今回は歌詞も作品のテーマを意識して書いた曲が多いですね。
●なるほど。そういう経緯でメロディと歌詞を書かれたので、開けている印象を受けたのかもしれないですね。「BLUE BIRD SHERRY」の歌詞はどういう経緯で作ったんですか?
ANZAI:もともと骨組みはあったんですよ。その時点からかなり前向きな内容ではあったんですけど、「BLUE BIRD SHERRY」は曲自体がポップになったので、その曲の雰囲気に合わせつつ、更にさっき言った作品のテーマに味付けして。
●今回はANZAIさん5曲、MATSUMURAさん5曲、そして佐野さんが2曲となっていますが、この比率というのはバランスを考えてですか?
ANZAI:いや、結果的にそうなったという感じですね。今回いちばんネタを持ってきたのはサノゴ(佐野)だったんです。みんなで曲を持ち寄って、そこで考えたんです。「誰の曲を何曲入れるか?」という話ではなくて、「LAST ALLIANCEという1つの個体が発信するメッセージとして相応しいのは、どの曲をチョイスして、どういうテーマを歌えばいいのか?」ということを。
●バンドとして発信するときに、なにをどう鳴らせばいいかと。
ANZAI:もちろん毎回そう思って作ってはいるんですけど、今回は結果としてそういうソングライターの比率になりましたね。
●今までのアルバムはトリッキーさというか、作り込んだ末の美意識を感じるような楽曲が何曲か入っていたと思うんです。でも今作を聴いた印象として、トリッキーさが表に出ていないというか。各楽曲の強度や普遍性が今まで以上に強いんですよね。
ANZAI:うんうん。
●今作もバンド外の音や、ちょっと不思議な音が入ったりしていますけど、アレンジとしての真新しさや物珍しさを入れるというアプローチではなくて、曲の世界観を表現することに注力している。その結果として各楽曲の完成度が過去の作品に比べても高いと感じたんです。
ANZAI:さすがにこの4人でいっぱい曲を作ってきていますから、みんな職人みたいになってきてますよね。バンドをやっていると、引き算をどんどん覚えていくじゃないですか。
●はい。
ANZAI:今作のアレンジは引き算の結果だと思うんですよ。たぶん前作よりも前々作の方が複雑に聴こえるようなものもいっぱいあるし。その辺の引き算はどんどん進んでいると思うんです。
●作品を重ねる毎に、引き算が進んでいるという実感があるんですね。
ANZAI:そうですね。それはもう、特に何の意識もせずに。自然にそうなってきていると思うんです。
●洗練されてきていると。
ANZAI:そうなっていたらいいですね。
●そう思います。普遍的な楽曲という印象で、洗練されてきている。
ANZAI:「自分ができる得意なものしかできねぇや」ってある意味割り切りはじめると、いい意味でチャレンジ精神がなくなってくるというか。チャレンジしても「難しいことやってもしょうがないや」ってなってくるんです。
●無理な背伸びをしなくなったということですよね。
ANZAI:そうそう。自分たちが今までやってきた中で、いちばん得意で、なおかつ人に伝えやすいもの。それだけをやった方が逆にかっこいいんじゃないの? ってなってきて。だから自然に引き算もされているし、大して手の込んだことはやらないっていうか。
●うんうん。
ANZAI:その辺をみんなでうまくコミュニケーションしながら。例えば「この曲はシンプルでいこうよ」とか話し合いながら作ると、やっぱりシンプルでかっこいいものに仕上がるんですよね。各々のフレーズも。
●なるほど。
ANZAI:そういう曲が今回は割と多いから、シンプルに聴こえるのもあるし、こねくりまわさずに終わっていく曲が逆によかったりすると思うんです。そういうシンプルさはありますね。
●いい意味で、思い切って割り切れたと。
ANZAI:そうですね。今までは逆にそれが不安だったりしたんです。「このままいったらヤバいから、もっとこねくりまわそうよ」みたいな。「付加価値を付けて他のバンドとの違いを見せないと」とかっていろいろ思うじゃないですか。
●そうですね。
ANZAI:そういうのがだんだんなくなっていって、自分たちの手の内の範囲で作っていったら、意外とそれがかっこいいと思えるものになったんです。
●それが本当の意味での個性という気がしますね。
ANZAI:そうなんですよ。そういうところにやっと気づくことができたんじゃないかな。
●ところでM-3「ディデュディディ」は佐野さんが作った楽曲ですが、タイトルの“ディデュディディ”はどういう意味なんですか?
ANZAI:わかんないです。
●わかんないんですか(笑)。
ANZAI:歌詞に出てくるんですよ。
●出てきますよね。“愛とはdidhudidi”って。
ANZAI:僕も意味がわかんないまま歌ってます(笑)。
●ハハハハ(笑)。
ANZAI:サノゴも理屈の部分だけでなく、感覚だけでやりたい人なんですよね。それはすごく感じるし、その感覚もよくわかるんですよね。やっぱり音楽だしっていう。
●はい。
ANZAI:そういうところで、きっと“ディデュディディ”に意味はないと思うんです。意味はないけどおもしろい語呂だし、歌にしたときにメロディに乗りやすい言葉だからいいなって。
●歌詞で訊きたかったことがあるんですが、ANZAIさん作詞/作曲によるM-4「灯」ですが、先ほどおっしゃていた“フレンドシップ”という今作のテーマが、この曲で強く表現されていると感じたんです。
ANZAI:はい。そうですね。
●この曲の歌詞に“優しさ”という言葉が2回出てきますよね。1つ目の“優しさ”と2つ目の“優しさ”では意味が違うというか、それこそ“フレンドシップ”というものに内包されている想いというか、ANZAIさんなりの経験に基づく実感が込められていると思うんです。
ANZAI:この曲の歌詞こそ今作のテーマを明確に意識して書き始めたんです。僕の中ではいろんなエッセンスが入っているんですよ。モチーフ的には僕ら4人の“フレンドシップ”が取っ掛かりにはなっているんですけど、やっぱり震災のことはずっと残っていて。
●ああ〜、なるほど。
ANZAI:そういうことも含め、「いずれは消えていってしまう自分という存在」にもスポットが当たっているんですよ。灯の光をそこに当てている。
●そういう視点は今作全体から感じました。死生観というか、“死”が見えている前提での“どう生きていくか?”という視点。
ANZAI:そうですね。そういうことはすごく考えましたし、ずっと思っていて。“優しさ”という言葉って、いわゆるベタじゃないですか。王道というか、人間の感情の中でも5本の指に入るくらいのものじゃないですか。
●そうですね。5本の指に入りますね。
ANZAI:歌詞にも書いていることですけど、その“優しさ”を大義名分にしてるだけで、狡さになっていることも自分ではわかっている。でも、それでも“優しさ”がなければいけないし生きていけないっていうか。単純にそう思っていることをこの曲ではキチンと歌いたかったんです。
●それはおそらく今まで続けてきたからこそ、改めて「“優しさ”を大切にしないといけない」と、このタイミングで感じたんでしょうね。
ANZAI:いや、そこまででは(照)。…でもそうか。そうですね。やっぱりそうですよね(笑)。
●ちょっとクサいですか?(笑)。
ANZAI:ハハハ(笑)。最近思うんですけど、例えばTVCMでビートたけしが「愛は勝つよな」って言ってるじゃないですか。
●車のCMですね。
ANZAI:僕はあの言葉とかすげぇ響くんですよ。“愛”もさっき言った人間の感情の中で5本の指に入るくらいのベタな言葉じゃないですか。でもあれがすげぇかっこいいなと思って。
●ああ〜。
ANZAI:時代的なものもあるんと思うんですよね。なんだかんだ言って“愛”は大切なんじゃねぇの? っていうところに(「灯」で歌っている“優しさ”は)似てるんじゃないかなって。
●似ていますね。そういうことは僕もよく思うんですけど、例えば「愛は大切だ」とか「優しくないといけない」というようなこと…他にも「希望を持て」とか最近だと「絆を大切に」というようなことって、子供の頃からずーっと親や先生、漫画やアニメや映画などから、我々は常に教えられてきたじゃないですか。
ANZAI:そうですね。
●だから自分で実感したというより、刷り込みみたいな感じで「愛は大切なんだ」と思い込んでいる気がするんです。でも若い頃なんて「愛ってなんだよ?」みたいにひねくれてしまう時期があって。
ANZAI:全然ありましたね。意味がさっぱりわからなかったですもん。
●ラブソングを歌っている人の気が知れない、みたいな。
ANZAI:まさに。
●でも人生でいろいろと自分で経験していく中で、リアルに“愛”や“優しさ”を実感する瞬間ってあるじゃないですか。「灯」で歌われていることは、そういう想いなのかなって。
ANZAI:そうですね。いろんなものが始まって、いろんなものが消えるとするじゃないですか。震災もそうですけど、命が一瞬にして消えてしまったり、今までどれだけ大切にしてきたものでも一瞬にして消えてしまうことがあったり。
●はい。
ANZAI:結局はすべてが繊細っていうか、灯みたいにサッと消えてしまう可能性があるもので。だからこそ、“優しさ”とか“愛”の大切さを意識的に自覚できればいいなと思ったんです。
●なるほど。
ANZAI:無意識ではもちろん思っていることなんですけど、それを意識的にしたいなって。例えば「もっと優しくしとけばよかったな」なんて後悔はしたくないし。人間の人生の話になっちゃうと、結局はそういう単純なものじゃないですか。そういうことを歌いたかったんです。
●さっき少し言いましたけど、“死”というものをよりリアルに感じるようになったんでしょうか?
ANZAI:そうですね。そういう意味では、僕の中のテーマは“フレンドシップ”と“生と死”が大部分を占めていると思います。それは作品を重ねるごとにどんどん強くなってきていて。
●なるほど。
ANZAI:それを全部ひっくるめたらだいたいシンプルなものに帰結すると思うんです。ぶっちゃけると、僕も20代の頃はすっげぇバカにしてましたもん。
●何をですか?
ANZAI:「なんだよ“愛”って!」みたいな。「そんなの誰にでも言えるんだよ」って。そういう言葉を使ったらかっこわるいと思っていたし、それだけ経験値が浅すぎるから当然なんですけど、“愛”なんか語れないし、“優しさ”とか人のことなんて語れなかっただけなんですけど、その裏返しでそうなっていて。まあ井の中の蛙だったんですけど、それが経験と共にちょっと変わってきたと思います。
●ライブハウスってそういう感情をシンプルに感じることができる場所ですし。
ANZAI:そうなんですけどね〜。それすらも斜に構えていたところがあったんですよ(笑)。まあ今は全然変わって来ましたけど。
●時間がかかったんですね(笑)。
ANZAI:かかりましたね(笑)。でも僕、時間はいくらかけてもいいと思っているんですよ。「まだ時間があるじゃん」って思える。到達しちゃうことが怖いというか、満足しちゃうのが怖い。逆にできていないことがあった方が、伸びしろがあって僕はいいと思ってるんです(笑)。
●いい性格ですね(笑)。
ANZAI:そういう奴は周りの人に迷惑をかけるんですけどね(笑)。
●ハハハ(笑)。
●ANZAIさんが作ったM-9「人間に告ぐ」ですが、この曲の“目覚めろ七つめの感覚”という歌詞は今作のタイトルにも通じていますよね。すごくメッセージが込められているというか、想いが詰まっている曲ですが。
ANZAI:これは強いですね。
●曲調も含めて強いですよね。
ANZAI:「色々ともう限界かな…もうそろそろかな…」みたいな。それと同時に「未来は何処ぞ? 子供の生きてゆく場所は何処で、この先どうなるんだ?」と、いろんな角度から追い詰められてた。憤りと、不甲斐なさと、自暴自棄と。怒りというよりも、心の叫びというか。『Seventh Sense』というアルバムタイトルはまっちゃん(MATSUMURA)が持ってきたんですけど、“七つめの感覚”というのは俺も共感できると思って、この曲の歌詞に採り入れたんです。
●「人間に告ぐ」の歌詞よりもアルバムタイトルの方が先に決まったんですね。
ANZAI:そうなんです。僕がバーッと書いていた歌詞の原型は結構前に作ったんですけど、やっぱり震災の後でいろいろと思ったことがあって、それを詰め込んだ感じですね。「僕たち人間これでいいの?」って本当に思ったし、自分では歌詞に書くことくらいしかできないと思ったし。それも含めて、自分に照らし合わせても崖っぷちの精神状態だったと思います。
●なるほど。でもサビではバーン! と開けていて。全編“怒り”だけで済まさないっていうのは、やっぱり音楽だなと思って。怒りもすごく込めていますけど、希望を欲している曲じゃないですか。それがいいなと思います。
ANZAI:やっぱり音楽ですもんね。
●あと、M-7「ハローエンドグッバイ」とM-12「つぼみ」にはバイオリンが入っていますけど、この2曲はバンドのテイストがすごく開けましたね。可能性がたくさん見えるというか。
ANZAI:それは僕自身もかなり感じていて。アルバムの中でもいいフックになっているし、なんかよかったですね。
●うんうん。
ANZAI:今までもたまにストリングスを入れていましたけど、今回は満足度が今まで以上に高いんです。
●ストリングスが、味付けではなく曲の芯になっているというか。
ANZAI:なっていますよね。「つぼみ」はストリングスありきで作ったので、最初からゴールも見えていたし、4人のイメージ通りに仕上がったんです。「ハローエンドグッバイ」もデモの段階からシンセでストリングスを入れていたので、今回の制作ではこの2曲でバイオリンを弾いてもらったんです。
●おっ、生で?
ANZAI:そうですね。ハローエンドグッバイはフレンチポップMEETSパンクみたいな感じになりましたよね。ポップでシンプルで、バイオリンが入っている曲。いい感じだなと思います。
●「つぼみ」なんてLAST ALLIANCEっぽくないんですけどLAST ALLIANCEの曲だということはわかるし、どのジャンルにも当てはまらないようなポピュラリティがあって。
ANZAI:そうなんですよ。バラードっぽい「つぼみ」を最後に入れることによって、アルバム全体が締まった感じがありますよね。
●あとM-11「time-lag-cloud」はTHE CHERRY COKE$のKOYAさん(Whistles / Trumpet)がホイッスルで参加されていますが。
ANZAI:僕は結構前から、“LAST ALLIANCEのマイナー調の曲にKOYAくんのエキゾチックなホイッスルが乗ったら絶対に哀愁度が増すんじゃないか?”ってずっと思っていたんです。1回ライブでもやってもらったことがあったんですけど、音源にもKOYAくんの笛を入れたかったんです。それが今回叶ったんですよね。
●以前から思っていたANZAIさんの楽曲イメージに、KOYAさんのホイッスルがぴったりだったと。
ANZAI:それで今回、ちょうどいい新曲ができたから、連絡して「音源で吹いてくれないか」って。
●アイリッシュのサウンドは、陽気ですけどどこか哀しげな雰囲気がありますもんね。
ANZAI:そうなんですよ。哀しい雰囲気を入れたかった。だからすごくマッチしたと思います。僕の中のイメージは「アンデス山脈」だったんですけど。
●それアイルランドじゃなくてペルーですけどね(笑)。あと、MATSUMURAさんがアイディアを持ってきたというアルバムタイトル『Seventh Sense』について訊きたいんですが。
ANZAI:まず響きがいいなというのがあって。それに第六感ってよく言うじゃないですか。いろんな感覚を持っている中で、第六感の次の七つめの感覚というのは“新しい感覚を手に入れたい”という意味があって。
●はい。
ANZAI:そういうのも含めた前向きなイメージがあるのが1つ。それと“Seventh”という言葉は、聖書では七つめの天国(Seventh Heaven:第7天)を意味しているらしいんです。天国の中にも位があって、七つめが最も上位とされているらしくて。で、今作は僕らにとって7枚目のアルバムで。そういういろんな意味がパズルみたいに組み合わさっておもしろいなと思って決めました。
●なるほど。7枚もアルバムを出していると、アルバムに対するモチベーションも変わってくるかと想像するんですが、今現在のANZAIさんにとってアルバムはどういうものですか?
ANZAI:より相手に伝えたいものというか、方法というか。どうしたら伝わるのかなって。さっき言ったような“優しさ”や“愛”みたいなシンプルなワードを、どういう技法で、どういうメロディで、どういうアレンジで、どういう歌詞に混ぜていったら相手に伝わるのかなって。それがもうほとんどを占めていますね。
●“伝えたい”という気持ちは昔と比べて変わっているんですか?
ANZAI:変わっていますね。昔は自分勝手だったから自分のやりたいことを詰め込んで…ロックバンドは結果的にそれがかっこよかったり、それが“伝わる”ということになったりすると思うんです。
●確かにそうですね。
ANZAI:でも僕らみたいに、ある程度経験を重ねて変に大人になっちゃってもそのままじゃあ、もしかしたらダメなのかもしれないし。今までの経験の中で、自然にそういう風なモチベーションに変わってきましたね。アルバムに対する取り組み方もそうだし、バンドに対する姿勢も。自分のやりたいことを存分にやってどうのこうのというよりも、どうしたら伝わるかとか、どうしたらいろんな感情をみんなが表に出せるようになるかとか。
●経験を重ねていくことで、どんどんそういう想いが強くなっているんですね。
ANZAI:マインドを自分の中に閉じ込めるのか、出すのかっていう。それがライブだと思うんです。恥ずかしがり屋の人とか、気持ちに傷を負っている人が、「この歌詞に共感できる」とか「この歌詞に共感できる」とか「このバンドが言ってることは響く」と思ったらリスナー、オーディエンスはそこで感情を表に出すじゃないですか。そこで感情を引き出せたらバンド冥利に尽きると思うんです。
interview:Takeshi.Yamanaka