札幌在住の19歳5人組ロックバンド、Drop's。その年齢と全員女性という編成からは想像がつかない強烈なロックンロールを鳴らす彼女たち。骨太でグルーヴィーなアンサンブル、鬱屈とした感情を綴った言葉、振り切れたテンションで展開するライブ、強烈な個性を持つVo./G.中野ミホの歌。高校の軽音楽部で結成されたDrop'sが、3/6に待望の2ndミニアルバム『LOOKING FOR』をリリースする。より強固に、より柔軟に、そしてより確かになったその音と言葉は、結成4年目を迎えた5人の成長の証。リリース後に控えている全国ツアーでは、彼女たちの衝撃的かつ衝動的なロックンロールが多くの音楽ファンの心臓を射抜くに違いない。
●全員19歳ということですが、音源聴いてびっくりしたんです。19歳らしからぬブルースというかどす黒いロックンロールというか。
5人:どす黒い(笑)。
●どういう経緯で結成したんですか?
中野:全員同じ高校なんですけど、部活で軽音楽部に入って、なんとなく結成したんです。
●みなさんこういうロックが好きだったんですか?
5人:いや、別にそういうわけでもなくて。
●あ、そうなんですか。
小田:私は、何が好きっていうジャンルとか音楽もなくて、とりあえず楽しそうだからバンドをやってみようという軽い気持ちで軽音楽部に入ったんです。
●荒谷さんは?
荒谷:私も誘われて入ったんですけど、中学の頃からギターをやっていて。1人で趣味でやってるだけだったんですけど、友達に「ギター教えてくれ」と言われて軽音楽部に入って、いつの間にかこのバンドに入ってました。
石橋:私も小田と近くて、楽しそうだなと思ってなんとなく軽音楽部に入ったんです。
●奥山さんは?
奥山:私は中学校のときに吹奏楽でドラムをやっていたんです。それで、高校ではテニス部と軽音楽部のどっちに入ろうか迷ったんです。迷ったんですけど、軽音楽部の先輩方がかっこよくて、軽音楽部に入ったんです。
●中野さんは?
中野:私はエレクトーンをずっと習っていて、それを弾きながら1人で歌ったり曲も作ったりしていたんです。The Birthdayが大好きなんです。
●あ、なるほど。Drop'sの音楽性は中野さんの影響が大きいのか。
4人:そうですそうです。
中野:高校に入ったら絶対にバンドやろうと決めていたんです。それで、この4人がヴォーカルを探していると聞いて、ちょうどいいなと。
●「私が好きなロックをこのバンドでやってやろう」と。「しめしめ」と(笑)。
中野:まさにそんな感じです(笑)。
●中野さんだけはやりたいことがハッキリしていたんですね。中野さんがもともと1人で作って歌っていた曲を、最初からこのバンドでやっていたんですか?
中野:いや、最初はコピーバンドだったんです。Superflyとかをよくやっていたんですけど、私がやりたいものに近かったし、みんな知っているし。このメンバーをバンドにどっぷり惹き込むにはちょうどいいだろうと(笑)。
一同:アハハハ(笑)。
●確信犯だな。
中野:コピーは高校2年になるくらいまでやっていたんですけど、学祭とか先輩たちに誘われてライブハウスとかにも出たりして。それで高2の夏くらいにオリジナルをやるようになったんです。地元の北海道の小さいコンテストに出ようということになって、そのためにはオリジナル曲が必要だったんです。それで最初の曲を作って“こういう感じがいいんじゃないかな”と思って。
●それが今のDrop'sに繋がっていくと。
中野:そうですね。
●最初は「楽しそうだな」から始まったけど、だんだんのめり込んでいったと。中野さん以外の4人に訊きたいんですが、バンドのどういうところに魅力を感じたんですか?
小田:みんなで音を出すっていうことが楽しかったですね。
荒谷:私は、それまで部活とかやったことがなかったんです。中学校のときはずっと帰宅部で、自分以外の人と何か1つのことをするという経験がなかったんですよ。だからバンドがすごく楽しくて。それまでは1人でギターを弾いてたんですけど、それよりも全然楽しいなって。
石橋:うん。みんなで一緒にやるのが楽しいよね。
●奥山さんは?
奥山:初めてライブハウスでやったときがすごく気持ちよくて。Superflyのコピーをやっていたんですけど、「中野の声がすごい!」みたいなことを先輩方が言ってくれて。楽しくて気持ちいいし、ドラムも好きだし、これはいいなと。
●なるほど。中野さんとしては、中学生のころから思い描いていた道をちゃくちゃくと進んで来れたんですね。
中野:そうですね。最初に曲を作るときも、みんなはこういうロックを知らないから全然伝わんなくて。口でめっちゃ説明したりしてすごく大変だったんです。でもだんだん作る空気みたいなものが出てきて、曲作りの感じもわかってきて。
●2011年7月に1stミニアルバム『Drop's』をリリースして全国ツアーをまわったらしいですが、そのツアーはどうだったんですか?
中野:そのときは北海道以外で初めてのライブだったし、初めてのツアーでもあったんです。すごく刺激的で、強烈な印象が残ってます。夜中に機材車で移動することも初めてだし、知らない場所でライブすることもそうだし。
●その中でも印象に残っていることはありますか?
中野:京都の磔磔ですね。ツアーは磔磔からスタートしたんですけど、その前の年に修学旅行で京都に行ったんです。そのときにどうしても磔磔を見に行きたくて。
●そんな女子高生あまり居ないやろ…。
一同:アハハハハ(笑)。
中野:小田と一緒の班だったんですけど、全然興味のない友達も連れて磔磔に行って。
小田:いきなりだったのに中に入れてもらえたんだよね。写真撮ったりして。「いつかここでライブやろう!」とか言って。
●青春だな。
中野:その1年後に憧れのライブハウスでツアーをスタートできたので、すごく嬉しくて。
●最初に言いましたけど、Drop'sの曲はブルース色の強いロックンロールで、すごく渋くてかっこいいと思うんです。歌詞の内容も人生の哀愁みたいなことが中心で、そういう雰囲気はサウンドにもリンクしていて。
5人:ああ〜。
●今までの話を聞いていて、それはおそらく中野さんがもともと持っていたものの影響が強いと思うんですが、なぜ中野さんの中からこういう世界観が出てきたんでしょうか?
中野:音の方は、やっぱりそういう音楽が好きっていうのが大きくて。全然詳しくはないんですけど、昔のブルースとかブラックミュージックが私は好きなんですよ。
●でしょうね。
中野:自分がグッとくる音楽がそういうものだったという感じで。それと歌詞については、私は日本語じゃなきゃ嫌なんです。
●なぜ日本語じゃないと嫌なんですか?
中野:歌詞については、自分が住んでいる街だったり、生活の中のことしか今は歌えなくて。それをやるにはやっぱり日本語がしっくりくるというか。英語じゃないなって。だから日本語で、音楽的には私の好きな黒い感じのロックをこの5人でやったらおもしろいんじゃないかなと。最初の曲ができたときにそう思ったので、その感じで今もやっているんです。
●なるほど。中野さんはDrop'sを結成する前から曲を作っていたとおっしゃっていましたが、そもそもなぜ曲を作るようになったんですか?
中野:曲を作る前から詩はずっと書いていたんです。どこに発表するとかではないんですけど。それで、歌うこと自体もずっと好きで、詩も書いてるし、自分で曲を作ってみようかなと思って作り始めたんです。だから自分でバンドをやるしかないなと。
●今作『LOOKING FOR』は6曲が収録されていますが、どういう基準で収録曲を選んだんですか?
中野:どの曲を今作に入れるかすっごく悩んだんですけど、今作は作った時期の空気を封じ込めたかったというか。中でも、M-6「赤い花」は次に向かっている感じがしていて。
●歌詞に“今から なにかを 探しに行くのさ”とありますね。
中野:はい。この曲は自分の中では新たな挑戦というか、“こういうことを歌ってもいいんじゃないかな”と思った歌詞を書いたんです。
●一歩踏み出したんですね。ということは、これまでは踏み出していなかったのか…。
一同:ハハハ(笑)。
中野:でもたぶんそうだと思います。ここから先には進めない感じというか。
●それをなんとかしたいという気持ちは感じるけど、それをどうにもできない鬱屈とした気持ちを歌っているというか。
中野:そうなんです。「赤い花」は去年の夏前くらいにできたんですけど、“JOIN ALIVE”に出させてもらったときにやったんです。そこで“これはアリだな”と思ったんです。
荒谷:一歩踏み出せた。
中野:うん。野外の開放的な感じもあったと思うんですけど、すごく気持ちよくて。それまで私は楽しげに「イエーイ!」みたいな感じはなくて、「私の鬱屈とした感情を込めた歌を聴け!」みたいな吐き出すような感覚だったんです。でも“JOIN ALIVE”で「赤い花」をやったとき、単純にみんなで楽しくできて。
4人:楽しかった。
●新しい方向性をバンドに教えてくれた曲なのでポイントになっていると。
中野:そうですね。だから今作には絶対に入れたくて。そこから他の曲を決めていった感じです。
●レコーディングはどうだったんですか?
奥山:今までとは違うスタジオで録らせてもらったんですけど、すごくいい環境で楽しくできました。
荒谷:今回はレコーディングだからできることも色々とできたかなって。歌を重ねてみたりもしたし。
小田:前までもそうだったんですけど、みんなで音を合わせたときのグルーヴ感みたいなものは出せたと思うし、自分たち自身の成長を感じましたね。
●なるほど。
中野:でもすごく苦労したところもあって。歌なんですけど、私は一部だけ後から録り直したりするのが嫌なんです。一部だけうまくいかなかったとしても、そこだけを歌い直して切り貼りするのはなんか違うんじゃないかなと思っていて。そうすれば曲としてはすごくいいものになるとは思うんですけど、でもそれはなんか違うと思うんです。だから思ったようなテイクを録ることにすごく苦労しました。
●さっきの「歌詞は日本語じゃなきゃ嫌だ」という話もそうなんですけど、それはロックをやる人たち共通の価値観のような気がするんです。中野さんは音楽で嘘をつきたくないというか、それが如何に誠実に鳴らされているかということを重視しているのかなと。
中野:かもしれないですね。思っていないことは書けないですし。
●頑固なのかな?
4人:うんうん。
奥山:中野は集中したらすごく不器用になるというか。
小田:思ってないことは書けないだろうなっていうのは普段見てても思います。そういうの歌いたくないよね?
中野:うん。今はね。私は聴く人に向けてメッセージみたいなものを歌えないというか、そこまで歌う強さがないというか。それよりは、自分のモヤモヤを吐き出すためにやっている感覚が今は強いんです。曲を作るのもライブもそうなんですけど。
●はい。
中野:さっきみんな「ライブはお客さんの反応が楽しい」と言ってたけど、私は自分の感情をバーッと解放したくて音楽を始めて、今でも歌詞は自分がぐるぐると思っていることしか書けないんです。そんな中で「赤い花」ができて、ライブでやったら“こういうのもアリなんだ”と思うことができた。
●「赤い花」ができたのは進歩なんですね。音楽と自分が直結しているので、言ってみれば人間的に進歩できたと。
中野:そうかもしれないです。
●ということは、Drop'sを始めて4年目になりますけど、中野さんは変わったんですか?
中野:変わったと思います。前は「すべてがくだらない」と思ってました(笑)。
小田:そんな子だったの?
一同:アハハハ(笑)。
interview:Takeshi.Yamanaka