ステージ後方に掲げられた大きなバックドロップには、Dr.住職のイラストがプリントされている。昨年12/10に発表された住職の脱退。彼らが昨年4月にリリースしたアルバムタイトルが『7』であることからも想像できるように、FUNKISTというバンドは不器用だけど愛すべきメンバー7人が、時にはぶつかり合い、時には助け合いながら、長い年月をかけて作り上げた音楽を鳴らしている。そんなバンドだからこそ、メンバーが1人脱退するというのはとても大きなことであるはずなのに、住職のラストステージとなったこの日のライブは、途中やや湿っぽくなったものの、終始笑顔が絶えないFUNKISTらしいものだった。
チケットはソールドアウト。詰めかけたたくさんのファンを前にREDJETSが熱いステージで大いに盛り上げた後、ステージにG.宮田が登場してギターを鳴らし始める。続いてG.ヨシロウとPer.オガチ、更に住職、Ba.JOTARO…と続いて1曲目の「SOS」がスタートし、最後に染谷が登場。ストイックに放たれた音は心地良い緊張感を帯び、Vo.染谷の凛とした歌が響き渡る。ステージのヒリヒリした空気を包み込むフロアの大きな一体感は、FUNKISTとファンの繋がりを象徴している。そのフロアの反応に身を委ねるように、メンバーは暴れながら激しく音を重ね、駆け上がるような展開と強烈なグルーヴで一気に会場を支配する。染谷が「駆け抜ける時間をさかのぼって踊り明かそう」と言って「沖縄」がスタート。大きな手拍子の後、たくさんの腕がステージに向けて掲げられる。オガチがハンドマイクで暴れながら客を煽る。染谷が続けて言った「世界でここだけにしかない音楽を」という言葉そのままに、これはFUNKISTとオーディエンスで作り上げたここだけにしかない音楽だ。
住職のカウントからスタートした「Snow fairy」では、染谷の歌が一気に聴く者の感情を高ぶらせ、会場の至るところから大きなコールが沸き起こる。ヨシロウがアコギで温かい音色を奏で、そこに宮田がアルペジオで愛おしい旋律を乗せ、染谷の切ない歌メロが胸を締め付ける「6才のうた」がスタート。ヨシロウのアコギと宮田の三線、そして染谷の歌だけで披露されたのは、胸に深く突き刺さる「光」。すべて住職が考えたというこの日のセットリストは、我々の感情を大きく大きく揺さぶるものだった。
「形あるものは必ずいつか崩れます。でも、だからこそ形のないものを信じて歩いて行きたい。住職が俺を信じてドラムを叩いてくれたからここまで来れた。未来は変わるけど、信じるよ」と言って始めた「愛のうた」で染谷は感情を露わにし、叫ぶように歌い、感極まってステージで泣き崩れる。そんな彼を支えたのはフロアからの大合唱。すぐに「俺が背中を押されてどうするんだよ」と染谷は涙を拭いて笑いながら立ち上がり、みんなと一緒に住職の方を向いて「1人じゃないぜ」と歌う。泣きながら笑っているような気持ちが会場に満ち溢れ、FUNKISTのライブに来たという実感が沸き起こる。
住職がパワフルな演奏で魅せた「SHINE」、グルーヴィーなビートが得も言われぬ快感を巻き起こした「Wonderful World」、「今日の夜はいつまでも終わらない方がいい」と染谷が言ってフロアから大歓声が沸き起こった「月下のラスタカラー」。曲を重ねていくに従い、メンバーが作り出す本能的なビートはどんどん加速し、そのビートの熱に比例して興奮はどんどん高まり、オーディエンスは声を上げ、メンバーは髪を振り乱し、全員が音で狂う。入れ替わり立ち替わりステージから身を乗り出して客を煽るメンバーに応えるように、たくさんの感情が飛び交って空間を埋め尽くす。染谷が「一生忘れないように、眼に、心に焼き付けといて。行こうぜ。お前ら全員FUNKISTだ!」と叫び、会場全体が大きく揺れた本編最後の「SUNRISE」は興奮の極み。オガチはいつの間にかフロアに降りて観客と肩を組んで身体を揺らし、会場は音とメロディとビートと笑顔で満たされた。
2度のアンコールでも会場は終始笑顔。住職が感謝の気持ちを告げ、メンバーや観客からは住職に対して何度も何度も「ありがとう」という言葉が投げかけられる。温かい声援と温かい気持ちに包まれ、ニコニコと笑ったまま住職はステージを後にした。
最初にも述べたが、住職の脱退はFUNKISTというバンドにとってとても大きなことだったはず。でもきっと彼らは、この日のライブのように、これからも笑いながら、時にはステージで感情を露わにしながら、人間臭くて愛すべき音楽を奏で続けてくれるはず。これからの未来を信じさせてくれる最高のライブだった。
TEXT:Takeshi.Yamanaka
PHOTO:HayachiN