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DATSUN 320

DATSUN 320

過去から未来へと心の中で生き続ける想いを今、唄にして証す

高校時代に不慮の事故で亡くなった友人に向けて歌われる、M-3「ヒグラシと17歳」。Vo./G.川口カズヒロの実体験に基づいて作られたこの曲は、DATSUN 320というバンドの本質を体現するような1曲だ。彼らは現実としっかり向き合い、悲しい出来事も自分の中で消化して前向きな歌に変え表現していく。喜怒哀楽を感じさせる演奏に鍵盤が色を添え、こだわり抜いた音質によって一層伝わってくる生々しい想い。この曲を鍵として生み出された2ndミニアルバム『月の蝉』には、彼らのリアルな生と感情の証が詰まっている。

インタビュー

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●1stミニアルバム『ハロー、1/100の君よ』発表時点で、既に今作のイメージがあったそうですが。
川口:収録曲は半分くらい決まっていて、アルバム全体のイメージカラーみたいなモノが何となく見えていたんですよ。前作からは若干角度が変わったところを見せようと思っていましたね。前作に比べると奥深いところもあるかな。
●前作よりも奥行きや幅の広さを見せている?
川口:1つ1つの音からフレーズまで、割と細かいことを散りばめながら作った感じですね。
生田:入っている音数自体が前作とは全然違うんですよ。自分達のやりたいことを、より表現出来たんじゃないかなと思います。
鵜沼:前作は結成当初からあった曲がほとんどだったんです。まずそれを消化した後に、新しく出来てきた曲を今作には入れています。
●「光の街」(M-2)は過去にデモCDで発表しているそうですが、他の曲は新曲?
川口:ライブではちょこちょこやっていましたけど、音源にするのは初めてという曲が多いですね。その時点からも大分変わって、イメージしていたモノよりも良くなったと思います。
●1曲目が「変動〜intro〜」という曲名なのは、自分達自身の進化や変化を象徴している?
川口:このインストは前作の最後に入っていた「街景色」という曲をピアノアレンジしたモノで、2曲目の「光の街」につなげているんです。「光の街」は上京して自分の心がどんどん変化していく様を描いた曲なんですけど、「街景色」はまだ田舎にいた頃にこれから東京へ向かう過程を描いた曲で。その2曲を通して1st〜2ndの間での、心の変化を込めた曲が「変動〜intro〜」なんですよ。
●今作は今のDATSUN 320というイメージ?
川口:リアルタイムな感じですね。田舎をイメージしていたのが前作なら、今作は東京に浸食されている自分というイメージが強いかもしれないです。僕は静岡県出身なんですけど、東京と静岡では空の広さが全然違うんですよ。
●曲調やアレンジもそういう印象を反映している?
川口:東京には色々なモノが溢れているイメージだけど、逆に田舎には色々なモノがない。だから、この曲の中でシンセがものすごく鳴っていたりして音数が多い部分は東京のイメージなんですよ。
●この曲の歌詞からは“生きていくことの辛さ”を感じているのかなと思いました。
川口:音楽やライブっていうフィールドで生きている人間は余計なことも色々考えるから、人の善悪とかが見え隠れして、純粋に人のことを見られなくなる瞬間があって。ずっと先の未来を想像すると、自分の人生が辛く見えてくる瞬間もあるんですよね。
●DATSUN 320はそういう負の面に向き合いながらも、前向きに生きようとする姿勢を歌っている印象があります。
川口:悲しい物事をただ単純に表から見ると悲しいだけだろうけど、裏から見ると悲しい中にも何かがあったりする。実は悲しいことまでの道筋には楽しいこともあったりするので、そこをすごくほじくり返しますね。1つの悲しい出来事に対しての全てを一度、頭の中で分解して考えます。歌詞は一言一句に気を遣って、それをサウンドにも活かしたいんですよ。だから、歌詞は悲しくてもあえて楽しい音にしたりもしていて。
●友人の死をテーマにしたM-3『ヒグラシと17歳』は、実際にあったことを題材にしている?
川口:高校2年の時に友達が交通事故で亡くなったんですけど、彼が亡くなった交差点に何年も弔いの花束が供えてあったんですよ。そこを通る度にいつも綺麗な花が供えてあるので、それは“誰かの心の中に今も彼はいる”ということの証明なんだと思って。
●何年経っても、彼を思って花を手向ける人がいる。
川口:いざ曲を作るにあたって改めてその交差点へ観に行ったら、その時にたまたまかもしれないけれど花が供えられていなかったことが無性に悲しくなって。だから、その時に花はなかったけど、歌という形に変えて“花はあったんだ”と俺が言い切ってやろうと。この歌が弔いの花だと言えるくらいの存在にしてやろうと思って作りました。
●高校の頃の出来事を東京に出て来た今になって、曲にしようと思ったのはなぜ?
川口:やっぱり、亡くなった当時は悲しいという感情だけだったんですよね。彼の死から10年経った今までの流れや今の自分の気持ちを考えた時に、“10年経ってもまだ彼のことを忘れていないということは、自分にとって彼がすごく大事ということなんだ”と思って。そのことを歌にしたいって今思えたから、このタイミングだったんですよ。
●「ヒグラシと17歳」は、今作のキーになっている曲だと思うんですが。
川口:僕は前のバンドではドラマーだったんですけど、この曲を作って“1つの命が亡くなっても、彼をずっと愛している人達がいる”ということを知らせたいという想いが新たにギターボーカルのバンドをやろうと思う大きなキッカケになって。
●今作のタイトルを『月の蝉』にした理由は?
川口:月にはウサギがいるっていう伝承がありますけど、僕の記憶では“死んだウサギが月で幸せに暮らしている”という話だった気がして。“蝉=命が短い”というイメージなんですけど、僕の中では月に蝉がいるんです。月に蝉がいて、みんなを照らしているというイメージをタイトルには込めています。
●「ヒグラシと17歳」は、以前から弾き語りのライブでもやっていたりはしたそうですね。
川口:2年くらい前からあって、ライブでもやったりしていました。今回のツアーにはアコースティックライブも何本かあるんですけど、僕らは“歌”をやっぱり前面に出したいのでアコースティックも好きなんですよね。
●DATSUN 320の軸にあるのは“歌”というのは変わらない。
川口:いくら演奏がゴチャゴチャしていたとしても、絶対に歌は壊さないように気を付けています。ある意味、歌の存在感が強ければ演奏がどんな感じでも良いという感覚があるんです。
●ライブは結構、荒々しい感じですよね。
鵜沼:荒々しいです。
生田:それは褒め言葉と受け取って良いですか?
●もちろんです(笑)。
鵜沼:ライブではいつも喜怒哀楽を見せたいと思っているんですよ。楽しい曲でも悲しい曲でも(川口)カズヒロくんの歌にはどこか怒りの部分があると思うので、喜怒哀楽がライブで感じられたら良いなと。それが荒々しい理由かもしれないけど(笑)。
川口:それって、俺がいつもキレているみたいじゃない? (笑)。
●別にキレキャラなわけじゃないですよね(笑)。
鵜沼:キレているわけじゃなくて、世の中や自分に対する不満や不安を感じるんです。カズヒロくんはすごく感情的な人だから、そういうモノを私達メンバーも表現出来たら良いなと思っていて。
川口:音源では汲み取れないプラスアルファの部分がライブにはあるんですよ。楽しい曲でも泣ける曲でも歌っている時に見せる身体の表現によって、何倍にも何千倍にもなる。最近は歌を崩さない程度に、しっかり身体でも表現しようと思っています。
●「光の街」の演奏が激しくなる部分は、ライブだとどうなるのか楽しみです。
川口:これは…メチャクチャになるかもしれないですよ(笑)。
鵜沼:特に(生田)真吾くんはキーボードとギターを両方弾かなきゃいけないから、やることが多すぎてライブではてんやわんやになっているよね。
生田:弾いては持ち替えて、エフェクターも踏んだりとかで大変です…。“これをどう表現するか”っていう挑戦を自分に課している感じですね。
●今回は音数が増えた分、ライブでの再現が大変そうですね。
川口:やっぱり前作より音数が多いから、“よく聴くとこんなフレーズも入っているよ”みたいなモノは結構あります。
鵜沼:M-7「今、青春と言える為に」の大サビ直前に、真吾くんがなぜかすごい速弾きを入れているんですよ。青春を歌ったバラードなのに(笑)。
●生田くんの中で“青春=速弾き”とか?
生田:ギターをやっているヤツはみんな若い頃、ギターヒーローに憧れるじゃないですか。だから、そのへんの燃え上がるモノが出たんでしょうね(笑)。
●流れ的にピアノで始まってピアノで終わるので、しっとりした作品という印象があります。
川口:曲を並べた時に“落ち着いたな”っていうイメージを持たれるかもしれないとは思ったんですけど、やっぱりDATSUN 320というバンドはピアノがキーだと僕は思っているから。そういう意味では、前作よりも“1st”らしいモノになったという気がします。
●自分たちらしさが前作以上に表現出来ている。
鵜沼:でも今後をまた変えていくような曲も入っているので、バランスもすごく取れている感じがするんですよ。M-4「Sunday Night」は、新境地的な曲になったかなと思っていて。私はベース本来の音が好きなんだけど、この曲ではあえて歪ませたりもしているんです。
川口:サウンドは“ワル”な感じがするよね。
●今までにはない音色になっている。
鵜沼:アバウトな表現だけど絶対に言いたいことが何かあるんだろうなと思わせる不思議な歌詞なので、演奏ではそのモヤモヤした感じを表したかったんですよ。メロディや楽曲のアレンジも今までにない感じですし、今後はこういう曲も増えたら良いですね。
●今回はサウンド面へのこだわりも強かった?
川口:今作のエンジニアさんは自主のデモ音源の頃からやってくれている方で、僕の好みや全体のサウンド的な世界観のイメージもわかっているんですよ。その人が作るドラムの音がすごく好きで、ボーカルの音の輪郭もすごく良くて。そういう音じゃないと例えば「ヒグラシと17歳」とかの生々しさも減るんじゃないかと思っていたんです。“これがDATSUN 320で出したい音なんだ”っていうモノが出せたんじゃないかな。
●生々しさがすごく伝わってくる作品だと思います。
川口:僕は出来るだけ、その曲に対して自分がリアルでいられる内に発表したいと思っていて。今回は良いタイミングでレコーディングが出来たけど、次の作品に対しても自分が1曲1曲にリアルに気持ちを込められる内に録りたいですね。

Interview:IMAI
Assistant:伊藤佐和子

メンバー

G./Key.生田真吾
Dr.古賀マサト(サポート)
Vo./G.川口カズヒロ
Ba.鵜沼ハルカ

リリース

月の蝉
2nd Mini Album 『月の蝉』
RUN RUN RUN Records
R3RCD-091
¥1,890(税込)
2010.7.6 Release

オフィシャルサイト

http://www.datsun320.net/

音源試聴