a flood of circleにとって、09年はまさに激動の1年だったと言えるだろう。4月に1stアルバム『BUFFALO SOUL』でメジャーデビューを果たすも、ギタリストが突如失踪…。だが、そんなバンドの危機的状況の中でも彼らは歩みを止めず、ゲストギタリストを招いて同年11月には2ndアルバム『PARADOX PARADE』を緊急制作・発表した。さらには、レコ発ツアーファイナルの今年3/5@恵比寿LIQUIDROOMでのワンマンライブもソールドアウトの大盛況。逆境を乗り越えてたくましく進化を遂げてきた彼らが、いしわたり淳治をプロデューサーに迎えてのメジャー1stシングル『Human License』をリリースする。“人間”や“生”に迫る生々しい歌詞のテーマをキラーなダンスチューンに昇華したタイトル曲を筆頭に、今現在の“a flood of circle”を存分に見せつける1枚だ。
Interview Part 1
〜激動の09年〜
●昨年はメジャーデビューして1年で2枚のアルバムをリリースして、その間にメンバーの失踪もあったりとまさに激動の1年だったと思いますが。
佐々木:怒濤の1年でしたね。去年の春に大学を卒業して、メジャーデビューもしたので自分としては区切りの年だったと思っていて。メンバーの失踪とか予定外のこともありましたけど(笑)、客観的に今振り返ってみれば面白い1年だったし、良くも悪くも全てが身になっていると思います。
●1年間で2枚のアルバムを出すというのは、最初から予定していたんですか?
佐々木:全然、予定していなかったです(笑)。前作の『PARADOX PARADE』(2ndアルバム)はメンバーが急に1人いなくなって、残った3人で何が出来るのかを試されているんだと考えて。勝負をしないといけないタイミングだったんですよ。当初はあのタイミングで出す予定じゃなかったんですけど、“ここはアルバムを作るべきだ”っていうのが満場一致の意見だったので、急遽サポートメンバーをお願いしたりして作りました。
●逆境だからこそ自分たちを試そうとした。
佐々木:まさにそうですね。僕らは23年間生きてきて、自分の力だけでどうにかしないといけないっていう状況に追い込まれるということがあまりなかったんです。自分に何が出来るのかっていうことを考えさせられたし、本当に良い人生勉強になりました(笑)。
●普通はバンドの活動自体が揺らぐ事態ですよね。
佐々木:個人的には全然辞めるつもりはなかったんですけど、周りから見れば揺らいでもおかしくないタイミングでしたね。でも、そこで逆に自分がなぜ音楽をやっているのかっていう基本的なところに立ち返ったら、ここは前に進もうと思えたんです。
●活動を続けることに迷いはなかった。
佐々木:どんな音楽がやりたいかということ自体は変わらなかったし、仮に僕以外のメンバーが辞めると言ったとしても、僕の気持ちは変わらなかったと思います。アルバムを作り始めたら、それはそれで楽しかったので意外と夢中でやっている感じでしたね。
●でも実際の作業的には大変だったのでは?
佐々木:そうですね(笑)。サポートの方と一緒にやること自体も初めてだったのでドタバタでしたけど、すごく新鮮でした。…単純に、友だちだったヤツが急にいなくなったから悲しかったですし今も引きずっているところはあるんですけど、それ以上に音楽に夢中だったというか。サポートの方々やスタッフも含めて支えてくれる人たちがたくさんいたのはありがたかったですし、乗り切ったことが自信にもなったんです。
●逆境の中でアルバムを作りきったことが自信につながった。
佐々木:自分たちにとっては、その後のレコ発ツアーが特に良かったんです。アルバム自体は夢中で作って、気付いたら出来ていた感じだったので(笑)。ライブで演奏することでどんな曲なのか実感出来たし、今年の3/5にツアーファイナルのワンマンをやり終えたところで、ストーリーが完成したなと思います。アルバムタイトルの『PARADOX PARADE』に込めた意味合いがはっきりと1つの答えになったという、充実感があったんです。
●『PARADOX PARADE』に込めた意味とは?
佐々木:生活している中で起こるゴタゴタもそうだし、色んなモノが入っちゃったアルバムだと思うんですよ。失踪によって色んなパラドクスに気付くことが多くて。僕は以前から“ブルース”ということにこだわっていたんですけど、その新しい突き詰め方としてそういうモノも歌詞や曲の中に全部埋め込んでみた。そういうモノも単純に自分の“対音楽”の中で生まれてきたパラドクスなんだという気持ちで向き合って作ろうとしたし、ファイナルではそれが出来たと感じられたんです。
●ブルースって、その人の生き方が映し出されている音楽ですからね。
佐々木:昔のブルースマンのレコードを聴くと、彼が実際にどんな生活をしてきたのかはわからなくても、生き様とか背負っている何かが生々しく伝わってくるんですよ。ブルースには色んな魅力があるんだけど、僕の中では“生々しさ”がすごく重要で。そこが素晴らしいと思うから、僕も自分が“ブルースをやっている”という意識を大事にしているんです。
●元々大事にしていたブルースというモノと、そのタイミングでより深く結びついたというか。
佐々木:今、100年も前の音楽に影響を受けてやるからには、絶対に新しいことを更新した方が面白いと思っているんです。前作を作ったことで、“更新しよう”と“深めよう”っていう両方向に根っこが伸びたし枝葉も伸びて。ドタバタしていた割に、作業はすごく充実していましたね。
●3人になったことで、曲作りの方法や曲自体にも変化はありましたか?
佐々木:ギターのアレンジを自分で考えるという実質的な作業も増えたんですけど、それ以上に僕以外のメンバー2人が曲を書き始めるという変化が大きくて。前作収録の「Ghost」はナベちゃん(Dr.渡邊)の作曲で、すごく気に入っているんですよ。3人全員が“自分にとって、音楽って何なんだろう?”というところまで一度行ったことが、曲作りにも良い影響となって出たんだと思います。
●佐々木くん以外の2人も、音楽との向き合い方をもう一度真剣に考えたことが良かった。
佐々木:2人の心の中まではわからないけど、“ブルースとは自分たちにとって何なのか?”と考えることは態度にも表れるから。逆境によって、3人とも成長出来たんじゃないかなと思います。
●サポートギタリストの方たちとの作業から得るモノもあったのでは?
佐々木:リードギターのフレーズを考えるということ自体も経験になったし、サポートの方たちと打ち合わせている中で新しい発見もあって。前作に参加してもらったギタリストの方々は本当に偉大な先輩たちでそれぞれにキャラも振り切れているので、色々と盗めたんじゃないかなと思います。
●個性的なギタリストばかりだと、1枚のアルバムとしてまとめるのは大変だったりしません?
佐々木:それはそうですね(笑)。でも僕たち3人の中で“こうしたい”というモノがすごくハッキリしていたので、サポートの方々にやって欲しいことも明確だったんです。その上で、それぞれの方と打ち合わせしながら進めました。どんな面白いことが出来るかという部分で意見を戦わせるのはメンバーもサポートも関係ないと思うし、純粋なぶつかり合いと混ざり合いでしたね。
●ツアーもサポートの方を入れて、まわったんですよね。
佐々木:ツアーは奥村大さん(wash?)に手伝って頂いたんですけど、今まで思っていたライブ像がひっくり返されたんです。元々、僕らはブルースが好きだというのもあって生々しいモノを求めてライブをしていたんですけど、それが今までとは違う形になって。“自分にとって大事なこと=ライブ”という前提があるからこそ、自分たちが気持ち良いだけじゃなく、お客さんをもっと楽しませようとするっていう発想の転換があった。
●奥村さんの影響でライブ観が変わった。
佐々木:もちろん大さんの影響もありますけど、ああいう状況で作ったアルバムのツアーだったからこそなんじゃないかなと思います。制作やツアーを通じて色んな要素を獲得出来た分、どう“ブルース”から外れないかということも重要になりましたけど。3/5にやったファイナルでは、自分たちの伝えたいことがお客さんにものすごく届いている実感があったんです。
●そこまでの成果が全て出せたというか。
佐々木:メンバーが失踪した直後にもライブがあって、その時はめちゃくちゃ楽しんでいる人と泣いている人とに分かれていたんですよ。それはそれで届いているからこその反応だったと思うんですけど、3/5はもっとポジティブなエネルギーに満ち溢れていて。僕の勝手な解釈かもしれないけど、それは実感として確かにあった。色々変化しながら、そこで新しいところに行けた気がするんです。
●激動だった09年の結果が出た。
佐々木:その総決算が、3/5のライブだったのかもしれないです。
Interview Part 2
〜『Human License』〜
●今作『Human License』に09年の総決算とも言えるライブ音源を収録したのはどんな狙いで?
佐々木:単純にシングルを盛り上げたいという気持ちと、今作を聴いてライブに興味を持ってくれたら良いなという想いからでした。ライブ音源は、今のベストな選曲だと思いますね。
●メジャーでの初シングルということで、特別な意識はあった?
佐々木:M-1「Human License」の原曲を作っている段階では、特にシングル曲を作ろうとは意識していませんでした。シングルを出すと決まった時、既にあった曲の中から選んだわけなので。怒濤の1年を過ごした後で“今、僕たちには何が出来るのか”っていうことを冷静に考えましたね。“曲にどうやってブルース的要素を盛りこむのか”とか、そのあたりの勝負のかけ方が今作では上手く出来ているんじゃないかなと思います。
●怒濤の1年で得たモノが今作には出ている。
佐々木:メンバーの失踪を経てのツアーということで同情されたくなかったし、ファイナルを終えて燃え尽きたと思われることもすごく恐かったんです。初のシングルということもあったけど、“自分たちのことをわからせる”という面でも今回がすごく大事なタイミングだと思っていて。
●初めて聴く人にも“a flood of circleとは何か?”をわからせたい気持ちがあった。
佐々木:そういう意味で、今回は歌詞・曲の両面で“ブルース”を大事にしたんです。それは自分のためでもあるんですけど、“踊らせる”というキーワードを考えていたこととも辻褄が合っていて。
●今作の歌には佐々木くんのクセがより強く出ているし、“a flood of circleらしさ”がすごく出ていると思うんです。その上で“ダンスチューン”的な要素が入ったことでキャッチーさも増して、シングルらしい突き抜けた作品だと感じました。
佐々木:そういうふうに感じ取ってもらえると、すごくうれしいですね。これまでも僕は生々しいモノが好きだと言ってきたんですけど、「Human License」では“生きている”ということや“人間”っていうことについて突き詰めた歌詞を書けたんです。それをシングルでやれたことが良かったと思うし、自分なりに面白いと思えば崩したところもあったので、そこのバランスもすごく良いと思っています。
●“あなたが着ているゴムの化けの皮 剥いでみたいのです”とか、人間のグロい内面をえぐるような生々しさがある歌詞ですよね。
佐々木:実は“あなた”というのが、僕にとっては自分のことだったりもして。最もグロく書けたので、僕ららしいのかなと思います。
●タイトルは“人間の免許”的な意味?
佐々木:これは警察官に職務質問を受けたことがキッカケで出来た曲なんですけど、その時に僕は何も身分証明書を持っていなかったんですよ。そこで“このまま人間かどうかを問われたらどうしよう?”と思ったんですよね。
●人間かどうかは問われないと思いますが(笑)。
佐々木:でも、それって何で確かめるのかなと思って。心はそもそも目に見えないモノだからあるかないかすらわからないのに、あると思って人と接するから微妙なズレに対して“わかり合えない”っていう想いが生まれたりする。この歌詞には、そのへんの気持ちが現れていると思うんです。
●今、話に出た“心”が、M-2「Quiz Show」の歌詞に出てくる問1の答えですよね?
佐々木:(笑)。問1も問2も答えが出しやすい問題だと思うけど、その真意としてあるのは“心”や“愛”っていう言葉の意味って何なのかっていうことで。自分はそういう問題にぶつかることが多いので、この曲はそこから始まっています。
●問いとしては真剣だけど、歌詞自体にはユーモアが漂っている気がします。
佐々木:それは今回の2曲ともに意識しました。やっぱり自分が誰かの詩集とかを読んでいても、ずっとストイックな文章を書いている人よりはどこか“楽しませよう”と思って書いている人の方が面白いと思うから。媚びを売っているというわけじゃなくて、書いている人自身も楽しんでいることが伝わってくるようなモノが好きなんです。だから、自分もそうやって書きたいと思っていますね。
●伝えたい内容が真剣で重いテーマでも、それをユーモアも用いて表現することでより広く伝わるというか。「Human License」も歌詞の内容は生々しいけど、それを踊れる曲に乗せて伝えようとする姿勢がa flood of circleらしさや“ブルース”というテーマにつながっていると思います。
佐々木:僕が“ブルース”を一番すごいなと思うところは、どんなに暗い歌詞でも必ずメジャーキーで歌われているところなんですよね。すごく辛い内容の歌詞でも、みんなで明るく歌おうとしているところに僕はグッとくる。さっき話した詩集もそうですけど、スタイルは全然違っても自分的にグッとくるモノってどこか近いんですよね。
●そういう佐々木くんが考える“ブルース”がすごく凝縮されているから、今作からは“a flood of circleらしさ”が伝わるんでしょうね。
佐々木:“ダンス”というキーワードを用意したのも、そういう理由からなんですよ。「Human License」はサンバっぽいし、「Quiz Show」はダンスビートが特徴で。そこに特化している曲を選んで、それぞれ二極化して並べてみた感じです。
●今作はいしわたり淳治さんのプロデュース作でもありますが、そこの効果も大きかった?
佐々木:淳治さんはいつも必ず、それがカッコ良いかどうかをビシッと言い切る自信があるという方なんですよ。すごく説得力もあるし、今回は淳治さんの経験や目線から判断してもらった後にまた自分たちで考えるという作業でした。メジャーで初のシングルということもあって名刺代わりとして他人に知ってもらうための作品だから、そういう目線をしっかり持った淳治さんが味方にいることがすごく大きくて。
●他人に伝えるために必要な目線で、アドバイスしてもらえる。
佐々木:自分が書こうとしている内容を淳治さんに伝えて現状の歌詞を提示すると客観的なアドバイスを下さるので、そこからもっと歌詞の内容が広がりました。
●サポートギタリストの方たちも含め、色んな人から刺激を受けつつ今作を作ったんですね。
佐々木:本当にありがたい環境だと思います。最近はずっと“自分にとってブルースとは何なのか”っていうところで葛藤しているんですけど、ドタバタの09年を過ごしたことでその問いに答えを出すためにはより人に伝えた方が返ってくるモノはデカいんじゃないかと考えるようになったんです。今作でもそれが出せていると思うし、前よりさらに広がっていくように作っているつもりだから、それを感じ取ってもらえたらうれしいですね。
●逆境の中で戦った09年があったからこそ、今の心境になれたし今作も生まれた。
佐々木:揺らいだ部分もあるんですけど、変わっていない部分もたくさんあって。困ったり悩んだりしても立ち返るとすぐに戻って来られる場所があると思っているから、今は揺らぐことを恐れず純粋にやれているんだと思います。
Interview:IMAI
Assistant:伊藤佐和子
Dr.渡邊一丘
Vo./G.佐々木亮介
Ba.石井康崇

1st Single 『Human License』
SPEEDSTAR
VICL-36602
¥1,260(税込)
2010.7.21 Release