1stアルバム『片想いのレッスン』リリースから1年半、G.宮野哲郎とKey.橋本智恵美が正式メンバーとして加わり、5人編成のバンドとして歩み始めたacari(あかり)。彼らがプロデューサーに片寄明人(Great 3)を迎え、ニューアルバム『プリズム』を完成させた。耳馴染みの良い爽やかなメロディが印象的なM-1「ほおずき弾けたら」から始まる今作は、Vo.三浦コウジの柔らかな歌声とセンチメンタルな詞世界が魅力的な1枚だ。5人が作り上げた“プリズム”に反射したカラフルな光は今、聴く者の日常を鮮やかに照らし始めた。
●前作『片想いのレッスン』をリリースしてからの1年半は主にどんな活動をされていたんでしょう?
三浦:ライブはずっとやっていましたね。当時はカフェっぽい場所や座って聴けるようなライブハウスに出ることが多くて。僕らはスタンディングで聴いてぐっとくるような音楽を鳴らそうとしていたんですけど。
●自分たちが表現したいものと聴き手の受け取り方に違いが生じていたというか。
三浦:前作の肌触りがカフェポップとか喫茶ロックぽい感じに捉えられがちで、誘われるイベントもそういう雰囲気のものが多かったんですよ。でも僕らはアコースティックな感じではなくて、もっと大きいイメージでバンドの音を鳴らしたいと思っていて。それで最前列にイスがある場所っていうのが、段々しっくりこなくなってきたんです。
●そこから出演するライブハウスが変わった?
三浦:この1年半でガラっと変わりましたね。メンバーで話し合って、自分たちが今やりたい音楽にフィットするのは、もっとスタンディングで聴いてもらえるようなライブハウスなんじゃないかと思うようになったんです。
●それによって、サウンドもよりロック感が増した感じはあるんですか?
三浦:意図的にロックにしようっていう感じではなくて、自然に環境とか作りたい曲が変わっていった感じはあります。元々聴く音楽も、もっとエッジが立った音楽が好きなのもあったので。
●去年の9月にG.宮野さんとKey.橋本さんが加入されるわけですが、2人が入ったきっかけは?
三浦:哲郎くん(宮野)は、僕たちが最初にやっていた音のイメージとはまたちょっと違うギタリストで、ちょうど僕たちが求めていたようなエッジの立ったサウンドを持ったギタリストだったんです。
●その時のacariがやりたいサウンドに近い音楽性を持っていた?
三浦:そうですね。僕たちとは違った色を持っていました。キーボーディストもずっと探していて、橋本がたまたま僕らのメンバー募集を見つけてくれて、一緒に演奏するようになったんです。●それまでもキーボードは入っていたんですか?
三浦:サポートでいろんな人にお願いして弾いてもらっていたんですよ。でもバンドとして、そろそろ勝負をしないといけないなと思ったんです。その時に、しっかり自分のイメージを共有できたり、化学反応を起こせるメンバーで固まりたいなと。
●それで今の5人になったんですね。
三浦:今のメンバーはそれぞれ出身地も聴く音楽も考え方もみんなバラバラで、そこがすごく面白いなと思っているんですよね。
●でもそれって、曲作りとかで苦労する部分も多いんじゃないですか?
三浦:時間はかかりますね。5人いるとその分表現できる幅は広がるんですけど、きちんと5人の見せ場を作れないと曲がすぐダメになるんですよ。最初はごちゃごちゃになってしまったりして大変だったんですけど、逆にそれがばっちりハマった時はすごく気持ち良いんですよね。
●ばっちりハマることは、なかなかない?
三浦:全部ばっちりハマるつもりでやっています。最終的にそうなるように持っていくというか。
●acariの楽曲は全て三浦さんが作詞・作曲されているわけじゃないですか。楽曲のイメージをそれぞれ考え方の違う4人に伝える時に、大変なことはありますか?
三浦:曲を作った時のイメージや歌詞やメロディに一緒についてくる匂いみたいなものは、ちゃんとメンバーに言葉として伝えるんですよ。でもイメージって簡単には共有できないものじゃないですか。だから摺り合わせることにすごく時間がかかる。そこはメンバーみんなのアイディアを聞いて、ぶつかりながらアレンジしていますね。
●噛み合うまで摺り合わせていく作業をする。
三浦:1曲作るのに1日中スタジオにこもることもあって。そうやって出来たものを持って帰って、もう一度僕の最初のイメージと摺り合わせる。そこでまた足したり減らしたりするっていう感じです。
●じゃあ最終的には三浦さんが最初に描いたイメージに一番近いものに仕上がるわけですね。
三浦:そうですね。そのイメージが大前提にあるんですが、今作はメンバー全員の見せ場を作りたいっていうイメージで作った曲がほとんどなんですね。
●今作『プリズム』はキャッチーな曲が多くて聴きやすい印象を受けたんですが、三浦さんの中でそういう意識はあるんですか?
三浦:今作はacariとしては2枚目のアルバムですけど、この5人では初めて作ったアルバムなので、ある意味僕は1stアルバムっていう気持ちがあるんですね。とにかくたくさんの人に聴いてもらいたいと思っていて。まずは聴くきっかけというか、間口を広げたいという気持ちが無意識にキャッチーなものを作りたいという方向に向いていったんだと思います。
●たくさんの人に聴いてもらえるようにというのは、今作に収録する曲を選曲する時点でもあった?
三浦:選曲は自分の今の気分に一番忠実な曲を持っていって、プロデューサーの片寄さんを加えた6人で相談して決めていった感じですね。5人全員の楽器の見せ場とか、みんな個々にアイディアややりたいことがあって、それが全部見えるようにしたかったんです。
●前作も9曲入りでしたけど、今作も9曲というのは何か意図があるんでしょうか?
三浦:僕の中で何度もくり返し聴けるアルバムって、8〜10曲のアルバムが多かったんです。なのでそのくらいの曲数にしたいなっていうのはあって。例えば今の僕たちが70分のアルバムを聴かせることよりも、たくさんの人に何度も聴いてもらえることを優先した方がいいと思ったんです。
●今のacariの雰囲気が一番良い形で伝わるんじゃないかと。タイトルが『プリズム』なのは、5人の個性が全部見えるようにしたかったから?
三浦:今作は絵の具に例えると、いろんな色を各自持ち寄って塗っていくようなイメージだったんです。“プリズム(多面体)”に5人それぞれの色を塗っていくと、見る角度によって色が変わって見えたり、離れて見えると光って見えたり、透明にも見えたりする。そういうカラフルなアルバムにしたいって思った時に、『プリズム』っていう言葉が出てきた。一番最後に出てきた言葉なんですけど。
●アルバムが出来た時に出てきた言葉なんですね。
三浦:タイトルはレコーディングの最後に考えたんですけど、出来上がった曲と今のイメージをまとめたらスッと出てきて。例えば1回聴いた時は赤い部分しか見えなくても、何回か聴いたら青い部分も見えてきたり、離れて見てみるとさらに広く見えるものでもあってほしいなと思っていますね。
●M-1「ほおずき弾けたら」はアルバムの1曲目に相応しい爽やかな曲ですね。
三浦:この曲は、この5人でのスタートのような曲にしたいと思ったんです。なので1曲目っていうイメージがすごくあった。メンバーの見せ場もたくさんあるし、より多くの人に聴いてもらえるきっかけになるんじゃないかなという想いで完成した曲です。
●今作の歌詞は曲のキャッチーさと比例して、暗い部分や寂しかったり切なくなるような情景が描かれていることが多いと感じたんですが。
三浦:一貫して言えるのは、僕はそんなに陽気じゃないんですよね。多分、暗いほうだと思うんです。それは寂しいとか、もどかしさとか、満たされない感情とか、どうすれば救われるのかを考えてしまう僕の性格もあると思うんですけど。感情を曲にすることでケリを着けているのかなと思っていて。
●三浦さんのそういう感情が、作る曲に如実に出ているというか。
三浦:それがにじみ出ていないと嘘だと思うんですよね。陽気な人が陽気な歌を歌うのはリアルなのでいいと思うんです。表現って絞り出すんじゃなくて、自然とにじみ出るものだと思っていて。それが最初に曲を作るイメージなんですね。
●そんな中でも、M-6「グッドモーニング」は少し前を向いているようにもとれる歌詞ですね。
三浦:この曲はそういう寂しさみたいなものを、そのまま出すのは気持ちよくなかったから、思いきり明るくした曲で。でもそれはただ明るいだけじゃなくて、諦めにも似た感じというか。後ろ向きが逆に前向きに見えるような感じなんですよね。
●嫌なことを寝て忘れるみたいな感覚?
三浦:それに近いですね。本当はすごく絶望的な曲で、“明日のことはわからない”って投げ出してしまっているんですけど。でもそのわからない部分に自分の希望みたいなものを乗せていて。そういう部分の前向きさはあるのかなと思います。
●聴く時の気分によって聴こえ方が変わる。
三浦:この曲は前向きな時に聴けば背中を押せるかもしれないし、なんか暗い時には寄り添えるような曲なのかなと。
●今作が出来上がった時に、三浦さんがブログで“自分の音楽に対する意識が変わった”と書いていたんですが、そういう感覚があった?
三浦:今作のレコーディングを通して、自分の表現したい音をイメージ通りに表現する難しさを痛感したんですよね。でもその大変な作業を乗り越えた時に達成感もあったし、これからもっといいものを作らないといけないっていう使命感も湧いてきました。
●それは片寄さんとの制作の中で変化したことでもあるんですか?
三浦:僕は昔からGreat 3や、片寄さんの音楽を聴いていたこともあって、音の世界観とか影響を受けている部分もあると思うんです。今回初めて片寄さんと一緒に作業が出来たことで、たくさんアドバイスも貰ったし、音楽の聴き方も変わりましたね。例えば絵を見るような感覚で立体的に音楽を聴くようになったり。
●絵を見るような感覚?
三浦:今まではスピーカーから鳴る音を浴びる感じだったんです。でもドラムが鳴っているところには木があって、ベースが鳴っているところには川が流れている。ギターが鳴っているところには鳥がいてみたいな感じで映像化して聴くと、音ってもっと立体的に聴こえるんですよ。それは今作のレコーディングですごく勉強になったし、今後の作品で一皮剥けるんじゃないかなと思います。
●それってすごい変化ですよね。
三浦:「自分の音楽とか格好いいと思う音楽を、もっと深く聴いた方がいいよ」って言われて。曲をちゃんと“見る”っていう感覚が生まれたんです。
●“聴く”じゃなくて“見る”。
三浦:普段聴いている時に、そんな感覚はなかったんですけど、それがすごい発見だったんですよ。
●じゃあ今作が出来たことによって、次の作品へのイメージも湧いた?
三浦:イメージは膨らんでいますね。僕の中では、作品が段々若返っていっているイメージなんですよ。だから今の気分としては、年は取っても音楽は若返っていきたいなって思っています。
●今作のリリースツアーはライブハウスも変わったことで前作の時とは違う雰囲気になっている?
三浦:前作を聴いてくれた人にも、また違う一面を見てもらえるんじゃないかなと思っています。曲のエバーグリーンな部分は変わっていないし、よりカラフルになったライブを観てもらいたいですね。
●ライブに対する感覚とか気持ちの向い方も、この1年半で変化しているんですかね。
三浦:ライブは常に楽しいものなんですけど、昔は楽しみ以上のものを見出せていなかったんですよね。それが今はお客さんが僕たちの演奏に反応してくれるようになってきて。だから最近はライブもすごくやりがいや手ごたえを感じています。意識は昔に比べたら180度変わったんじゃないかな。関西や名古屋にツアーで行くのも1年ぶりなので、たくさんの人に生で聴いてもらいたいなと思っています。
Interview:中路 亜紀
Vo./G.三浦コウジ
G.宮野哲郎
Ba.伊藤祐介
Key.橋本智恵美
Dr.斉藤正樹

NEW ALBUM 『プリズム』
LAVAFLOW RECORDS
DDCO-4002
¥2,000(税込)
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